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家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司
ボランティアのすすめ
身近な所から”人のためになること”をしよう!
あけましておめでとうございます! 年頭に当たり、今までの人生を振り返って整理し、新たな目標と意欲をもって出発したいものです。
私自身は、今まで以上に人から喜ばれ、感謝される生き方をしたいという思いを新たにしました。自分と家族が食べていくための仕事をすることは当然ですが、それ以外に何か一つでも、人々に感謝されることをしていきたいと思うのです。
奉仕活動やサークル活動をして、周りの方々と喜びを分かち合うことができれば、それは健全な生きがいになり、より良い社会づくりに貢献することにもなります。
父から学んだボランティアの心
ボランティアというと、私がまず思い出すのは父の晩年の生き様でした。父は若い頃のケガがもとで右足が不自由になり、テーラーになって洋服店を開業しました。
店が軌道に乗ってから、若い時に覚えた二つの趣味の勉強を再開したようです。
一つは観世流能楽の謡曲で、人間国宝の井元完二先生の門下生となり、師が他界されるまで13年間、毎月2回、別府市の教室に通っていました。
もう一つは、母と共に一生やっていた池坊流の華道です。
父は晩年になってから、その趣味を生かしてボランティアを始めました。
謡曲のほうは、毎年、大分市の能楽堂で家元を迎えて開かれる能舞台公演で奉仕するほかには、親戚の結婚式で”高砂(たかさご)や~”と謡ってあげたり、何かのイベントで披露するくらいでしたが、生け花のほうはもっとお役に立てたようです。
地元の公民館や集会所の玄関に20年以上、毎週、新しい生け花を無償奉仕で生け続けたほか、教室を開いて婦人たちに教えました。月謝は材料代の実費程度しか受け取らなかったので、非常に喜ばれたようです。この活動は、80歳を過ぎて山に材料を採りに行くことが困難になったのを機に閉じることになりました。
方言小咄をつくって施設を訪問
その代わりに始めたのが”語り部(べ)”の奉仕でした。以前から「これは私のボケ防止じゃ」と言いながら、5分か10分で話せる短編の創作小咄(こばなし)を国東(くにさき)地方の方言で書いていました。それがいつしか数十篇にもなっていたのです。
それを利用して、地元の3か所の老人施設に毎月1回慰問に行くのです。
私も何回か、父に誘われて施設の慰問に同行しました。
当日、施設のラウンジに高齢者が集まります。車椅子の方もかなりいました。
最初は父が音頭をとり、みんなで歌を歌います。昔懐かしい唱歌や童謡、流行歌や軍歌などを歌うのです。不思議なことに、認知症の人たちも昔の歌は思い出すようです。
日ごろほとんど無表情の人も、この時は笑ったり涙を流したりして歌います。10曲ほど楽しく歌った後は、父が方言小咄を2つほど語ります。地元の方言なのでわかりやすくて面白いらしく、うなずいたり、大笑いしたりして聞いてくれます。
終わって帰る時、何人かの人が寄って来て、「ああ、面白かった!また来ちょくれ」と言ってくれます。
「これは私の生きがいだよ。こんな年寄りでもお役に立てて、喜んでもらえることがありがたいんだ…」と父は述懐していました。
ほかにも、商店街の会計、神社の総代、老人クラブの役員などをやっていましたが、もう一つ、父が死ぬまでやっていたことがあります。月に1度、ちらし寿司や五目飯、蒸しまんじゅうなどを作っては、近所の一人暮らしの老人達に配っていました。
私が帰省した折に頼まれて配ったことがありましたが、足が不自由で車の運転もできない父が、2~3㎞も離れた人に歩いて届けていたことを知った時は、思わず胸が詰まりました。
父は母が亡くなった後も、最後までこんな生活を続けて94歳で永眠しました。
そんな父の姿を見ながら、やっぱり、人間は”誰かのために生きること”が一番うれしいんだな…ということをあらためて感じさせられました。
”ボランティア”は理想社会をつくる道
人類が夢見てきた理想世界は、国家や制度の変革だけでできるのではありません。
市民一人ひとりの自主的奉仕の花が咲き乱れる社会にこそ、自由と喜びが躍動します。
戦後数十年、日本は民主主義国家として成長し、若い人もボランティアをする人が増えました。その分野はありとあらゆる方面に広がっています。
私は特に、退職後の第二の人生は、何らかのボランティアをすることを心からお勧めします。どんな小さなことでもいいのです。自分ができる事…得意な事、好きな事、身につけた知識や技術…それを生かして誰かと一緒に始めてみましょう。
もし夫婦で一緒に、あるいは親子で一緒にできれば、なお素晴らしいですね!
それは私たちの人生をより価値あるものにしてくれるだけでなく、社会全体を助け合い与え合う場に成熟させ、愛にあふれた理想の社会にする道だと思うのです。