福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(39)local_offer福祉のこころ
社会福祉士・精神保健福祉士 末吉重人
障がい者福祉について (3)
身体障がい者福祉
わが国における身体障がい者福祉は、身体障害者福祉法によって行われます。1949年、かの有名なヘレン・ケラーの尽力によって同法は制定されました。NHKの番組「その時歴史が動いた」によれば、当時日本を統治していたGHQはその頃の身体障がい者が傷痍軍人であったことから、彼らを支援しないとの立場を取っていたようです。
しかし、戦前から我が国に障がい者のための法律を制定したいと活動していた中途失明者の岩橋武夫が、ヘレン・ケラーを招致し、全国での講演による世論の喚起を行い、そしてGHQとの交渉を成功させ同法は制定されました。岩橋はその後、56歳で持病を悪化させ亡くなりますが、同法制定の人柱のごとく、「一粒の種」(ヨハネ12・24)のような人生となりました。
身体障害者手帳
身体障がい者福祉の中心は「身体障害者手帳」(以下、手帳)です。手帳が地方自治体によって交付されると法律上、身体障害者となり様々な支援を生涯受けることになります。
身体障がいの範囲ですが、四肢の麻痺・器官の欠損などに加え、内臓疾患も含みます。心臓病などを長く患い、その疾患とともに暮らさなければならない場合、障がい認定が行われ身体障がい者となります。HIVもその対象です。
認定は、都道府県が指定した指定医が診断をして行います。その際、等級も示されることになりますが、一番症状が重い場合に1級、順に6級までの分類がなされます。等級によって受けられるサービスが異なることになります。
提供されるサービス
手帳を交付されると、障がい者年金の支給が開始されます。また税金・公共料金などの減免措置、交通運賃や各種料金の割引もあります。
在宅で生活しながら受けられるサービスには、補装具(車椅子等)の支給、訪問介護員の派遣、デイ・サービス(レク中心のサービス)、デイ・ケア(医療的ケアを含む)の利用などがあります。施設入所しなければならない場合、廉価での入所が可能となります。
手帳を取得するということ
手帳を交付されるということは、ある意味、障がい者になるということです。これを受け容れることが困難な場合があるかも知れません。「障害の受容」という重い課題です。しかし提供されるサービスの多さは、障がいを持ちながらも社会の一員として「社会参加」できる可能性を広げます。
また手帳保持者を一定数、雇用しなければならない制度もあり、就労の機会も増えます。今回の内容が該当する方々におかれては、障がいがあったとしても、法律による福祉サービスを利用して、自立した生活が送れる道を模索されることを心からお勧めします。