福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(40)local_offer福祉のこころ
社会福祉士・精神保健福祉士 末吉重人
障がい者福祉について (4)
知的障がい者福祉
知的障がいとは
知的障がいの定義については意外と難しいものがあります。「知的障害者福祉法」(1960年制定)において、明確な定義がありません。一般的には、知能指数(IQ)が社会生活を送ることに支障がある者を指します。しかしそれが数値としてどのくらいなのか、全国的な合意がありません。知的障がい者福祉における一つの課題です。
知的障がい者の認定は、各自治体が行いますので、その自治体の指針に従うことになります。例えば東京都の場合、4段階の等級に分かれ、一番重い1度はIQが19以下、2度は20.34、3度は35.49、4度が50.75となっています。
どの等級にも「概ね」という表現が付きますが、これにも注意が必要です。IQは検査方法や検査時の体調によって数値が異なります。100が標準とされ、ダウン症が知的障がいの代表的な方々です。
療育手帳
知的障がい者の手帳についても全国共通の名称がありません。その定めも知的障害者福祉法になく、自治体によって異なります。大方は「療育手帳」ですが、これ以外に「愛の手帳」(東京都)、「みどりの手帳」(さいたま市)、「愛護手帳」(青森県)等の名称があります。
自治体によって知的障がいと認定され、手帳が交付されるには、指定機関(知的障害者更生相談所や児童相談所、発達センター等)における知能検査が必要です。身体障害者手帳とは異なり、指定医の診断は要りません。
手帳取得後に提供されるサービスは、身体障害者手帳のサービスに準じます。その内容はシリーズ第3回において紹介しましたので、それを参照して頂きたいと思います。
同じようなサービスが提供される理由は、3障がいの方々への支援は「障害者総合支援法」によって概ね共通化されているからです。詳細は第6回以降に述べたいと思います。
知的障がいは生まれつきのものであり、生涯変わりませんが、自治体によっては手帳の更新時期を定め、その都度、知能検査を求める場合もあります。
いわゆるボーダーと呼ばれる場合について
知的障がいにも、いわゆるボーダーと呼ばれる方々がいます。知能指数が障がい認定されるギリギリの数値です。日常生活を支障なく過ごしているように見えますが、実は細かいところで困っていることがあります。
ある夫婦の相談事例ですが、妻がそうした立場でした。夫はなかなか妻を信頼できない。肝心な場面で妻は決まって話し合いに応じてくれない、と夫は感じていました。
しかし、実は、妻は難しい状況を知的に呑み込めていませんでした。悪意ではなく、理解できないため対応できませんでした。夫に対し筆者が、知的障がいの説明をしたところ夫も腑に落ちました。妻からはとても、話題が理解できないとは言えなかったのです。
ある状況に適切に対応できていない場合、その関係者に知的障がいを想定してみる必要があります。そうすることで、縺(もつ)れた糸がほどけることがあります。