機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(2)

人生を豊かにする金言名句(2)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

「音楽を聴くことは…心の風景を変えてくれます」

日本を代表するオーケストラの一つ、読売日本交響楽団(読響)のシーズンプログラムに載っていた一言です。「心の風景を変えてくれる」という経験は、音楽観賞に限らずあります。特に、日常生活とは違う環境に包まれた時、ストレスが解消できたり、ネガティブな思いから解放されたり。

私は地方都市に住んでいますが、そこに読響がやってくるのを知りました。こんな機会はめったにありません。読売新聞に公演案内が載っていたので、すぐにチケットを手配。値段もリーズナブルでした。

その頃、県内ではまん延防止等重点措置が実施されていました。厳重な予防策をしっかりした上に、コンサートホール側の指示に従って入場。圧迫感、窮屈感がどうしてもあります。ですが、それを一掃して余りある演奏でした。感動の涙を何度流したことか。

その日は、不思議なほど、音が耳によく入ってきました。中でも、管楽器(金管も木管も)。力強いのにキンキンとしておらず、体全体にズシーンと迫ってくるような。絶品はフルート。音色は自信にあふれていて、ただただ魅了されました。

曲目は、シューベルトの「未完成」、ベートーベンの「運命」、ドボルザークの「新世界から」。クラシックでは「超」がつくほど馴染みのある交響曲を3つ。

ここで、ついクセが出ました。コロナ禍だからでしょうか、なぜこの3曲なのかと。”深読み”が頭の中で始まりました。――未完成な人類と、その社会。そこに運命的に誰も望まない新型コロナウイルスが蔓延する。対策はうまく進まない。それでも、人類は英知を発揮して、新しい世界を築いていく……。

そんな思いを心の片隅においたせいか、演奏のさなか、”人類は今後どうなるんだろう””新世界に向かう道もデコボコが続くだろうな”などと思えてなりませんでした。

新たな出会いとか発見とかによって心の風景が変わると、気づかなかった方向への一歩を踏み出す力が生まれてきます。そんな力を呼び込むスペースを心につくってくれる工夫や試みが、日常の一コマにあったらいいなと思いました。