福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(41)local_offer福祉のこころ
社会福祉士・精神保健福祉士 末吉重人
障がい者福祉について (5)
精神障がい者福祉
精神障がいとは
精神障がいは、精神疾患が長期化し、病気と付き合いながら生活していかなければならなくなった状態のことを指します(慢性病のイメージ)。精神疾患は治癒・回復することもありますが、長期化しやすい傾向があるからです。
代表的な疾患は、統合失調症(陽性症状としては幻聴・幻覚、陰性症状としては感情の平板化:平たく板のようになってしまうこと)、双極性障害(かつての躁うつ病)です。
もう少し身近な精神障がいとしては、不安障害があるでしょう。かつて潔癖症と言われた強迫性障害、また多重人格といわれた解離性障害などです。突然襲ってくる予期不安(不安になることを予想して不安になる)に悩まされるパニック障害もこの範囲です。
自閉症スペクトラム、注意欠如多動症、学習障害などの発達障がいも精神障がいに分けられます。詳細は次回紹介したいと思います。
精神障害者保健福祉手帳
精神障がい者には、「精神障害者保健福祉手帳」が指定医の診断によって支給されます。全国共通の名称です。等級は3段階に分かれ、受けられるサービスが等級で異なります。
手帳を保有していなくとも受けられるサービスがありますが、保有したほうが支援は豊富になることは言うまでもありません。2年ごとの更新があります。
精神疾患の治療について
精神科病院への通院自体に抵抗があるとの指摘もあります。まだまだ偏見が存在する精神疾患の治療と言えましょう。しかし他の病気と同じように、やはり「早期発見・早期治療」が回復を早めます。初期の段階で精神科に通院することを躊躇し、治療の時期を失することは是が非でも避けたいところです。
治療の原則は、本人と主治医、それに家族との三位一体の信頼関係の構築です。よく服薬が相談のテーマとなります。薬漬けにならないか等の疑問や不安を、正直に主治医にぶつけてみましょう。家族の負担が大きいところから、家族への支援が重視されているからです。
負の治療の歴史
精神科での治療が複雑になっている現状があるとすれば、それはその歴史にあると言えるでしょう。患者を自宅の牢に閉じ込める「私宅監置」が1950年まで法的に認められていました(精神病者監護法)。それが廃止された現在でも(「精神保健福祉法」)、症状の悪化による「自傷他害」(自殺や他人を傷害すること)の恐れがあれば、指定医の診断による措置入院(強制的な入院)という制度があるからです。
本人の意思を制限することのある精神科治療においては、人権擁護と治療とのバランスに留意する必要が常にあると言えます。