機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(45)

福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(45)local_offer

社会福祉士・精神保健福祉士 末吉重人

障がい者福祉について (9)

障害者総合支援法について(下)

支援費制度とは

障害者総合支援法の特徴は、支援を受ける障がい者が自分で受けるサービスを決定するということです。これを「自己決定」と呼んでいますが、現在の社会福祉の基本的な考え方となっています。国が障がい者自身に支援費を支給し、障がい者は自分で受けたいサービスを選択、その費用を支援費で支払う(一部、自己負担分もある)。今となっては当たり前のようなことですが、以前はそうではありませんでした。

措置制度とは

障がい者福祉の分野で「自己決定」の制度が採用されるようになったのは、2003年からのことです。戦後まもなく開始された「措置制度」では、障がい者へのサービスは行政が措置として行い、その際の費用も行政が負担するというものでした。しかし、障がい者自身の希望はあまり考慮されない仕組みになっていたのです。

当時は措置制度にも合理性があったというべきです。社会福祉が周知されていない日本において、全国一律でかつ平等な福祉サービスを国民に提供するために、厚生労働省(当時は厚生省)で設定された措置制度を各地の行政が実行しました。

措置制度のマイナス面

しかし時代が進み、社会福祉が国民によく理解され始め、かつ福祉サービスを受けたい人が増加する状況下においては、措置制度のマイナス面が目立つようになります。障がい者を受け入れる福祉サービス提供者側に、無駄が増え、またサービスの質の低下も発生してきたのです。その理由は措置制度下では、サービス利用者を行政が提供してくれるため、事業者側が自助努力を怠る傾向があったからです。

社会福祉基礎構造の改革

そこで採用されたのが「契約制度」です。障がい者と福祉サービス事業者が直接「契約」を結び、支援費で利用料を支払う仕組みです(実際は事業者側が代理請求する)。そうすることで、事業者側は利用者を獲得するための自助努力を強化し、サービスの質が向上、無駄もなくなるとの国の算段です。これを「措置制度」から「契約制度」への社会福祉の基礎構造の改革と呼びます。

自己決定の重要さ

その際最も重要なことは、繰り返しになりますが障がい者自身の「自己決定」です。物事を決める際、障がい者自身がどうしたいのか、を中心に考えなければなりません。おもんばかって、先回りして、周囲が先に決めてはいけません。

では意思表明が難しい場合にはどうしたらいいのでしょうか。その際は、意思決定支援という仕組みを利用します。複数の専門家によって、意思確認を行う方法があります。

ともすれば、良かれと思って行う障がい者への対応が、障がい者自身の意思に反するということは多くあります。その点への注意を肝に銘じる必要があります。