機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(20)

人生を豊かにする金言名句(20)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

歴史法廷

やや硬い言葉を選びました。これは、故中曽根康弘さん(元首相)が著した『自省録』のサブタイトルにもあり、本文にもある名言です。政治家の覚悟や政治に取り組む真剣な姿勢を表現していると感じました。

「政治家の人生は、その成し得た結果を歴史という法廷において裁かれることでのみ、評価される」と。そして、サブタイトルは「歴史法廷の被告として」です。何と重みのある一言でしょうか。

「評価される」といっても、自身が存命中にはその判決が下らないかもしれません。それでも、政治家として有権者から選ばれたからには、「何を語り、何を実行し、どんな実績を残したか」が問われます。その後の歴史の中で良く評価されれば「あの人は立派だった」「国益を重んじた人だった」などと言われるわけです。では、そういう政治家を、特に戦後の日本で何人思い浮かべることができるでしょうか。数えるほどしかいないかもしれません。

温故知新。歴史に学ぶことができるのに、政治家の多くは目前のことしか見ていないようです。国会中継などを見ていても、発する言葉に重みを感じさせません。以前こんな女性議員がいました。「2番ではダメですか!」。愚かにもこう叫んでしまいました。この人への歴史法廷の判決は、早々に下されていたでしょう。

最近、中曽根さんのこの名言を引用した新聞コラムがありました。それは橋本五郎・読売新聞特別編集委員が執筆した「五郎ワールド」(同紙2月4日付)。そこには狂気の銃弾に倒れた安倍晋三元首相の近著『回顧録』(聞き手・橋本五郎氏ほか)が紹介されていました。「(安倍政権は)政権運営にあたって中曽根康弘元首相からの助言は大きかった」と記し、さらには「(『回顧録』は)さながら安倍被告が歴史という名の法廷に提出した陳述書なのである」と結んでおり、安倍氏の実績が大きかったことを示唆しています。

瞑想する中曽根さんの姿を思い浮かべる言葉があります。「(朝早くは) 静謐(せいひつ)な時」だと。歴史的な大局観を常に持ちながら、「判決」の時に思いを巡らせつつ、世の中の動向を見つめていたのだろうと思います。