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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(6)

チョッとためになる健康のお話(6)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

ブドウ糖だけで生きるがん細胞

暑くなると飲みたくなるのが、シュワシュワッとなる炭酸飲料です。自動販売機でも気温が上がってくると、炭酸系のペットボトルが多くなります。最近は、カロリーゼロの炭酸水が多くなりましたね。私も、ファミレスのドリンクバーではいつも炭酸水を選びます。

昔は粉末の炭酸ジュースがありました。それをやかんに入れて冷たい井戸水で溶かし、農作業を終えた後、家族で飲むのが楽しみでした。かつては炭酸飲料といえば、ラムネ、三ツ矢サイダー、そしてコカ・コーラでした。コカ・コーラは豊かなアメリカ文化を象徴し、「憧れ」で飲みましたが、人工的な味が合わず好きになれませんでした。

甘いものを飲んだり食べたりすると幸福感に満たされますが、それは脳が感じています。脳の唯一のエネルギー源がブドウ糖なので、足りなくなると甘いものが欲しくなるのです。しかし、欲に任せてたくさん食べると、血液中にブドウ糖が急激に増え、糖化現象が起きて、動脈硬化が進んだり、タンパク質が劣化します。それを防ぐために、たくさんのインスリンが膵臓から分泌され、ブドウ糖を脂肪に変換して、一気に血糖値を下げます。ですから、数時間しか経っていないのに、また脳は空腹感を感じて、甘いものが食べたくなります。これが繰り返されると、膵臓が疲れてインスリンの産生が出来なくなり、インスリンに対する抵抗性も生じて、効きが悪くなり、尿に糖が出るようになって糖尿病になります。

さて、前号の続きです。酸素とブドウ糖でエネルギーを作っていたミトコンドリアは、急に酸素が来なくなるとエネルギーを作れなくなるため死に、細胞も死にます。

ブドウ糖が細胞に取り込まれると、まずピルビン酸に分解されます。この時にエネルギーが生まれます。そのピルビン酸をミトコンドリアが取り込んで酸素と反応させ、莫大なエネルギーを生み出します。その時に二酸化炭素が発生し、赤血球に回収され、肺を通して体外に排出されます。ところが、酸素が来なくなっても死なずに、ブドウ糖を分解するだけで生きられる細胞が生まれてきます。

ただ、ブドウ糖を分解するだけでは少しのエネルギーしか生まれないので、この細胞は通常の40倍のブドウ糖を取り入れる構造に変化します。これががん細胞の芽です。更に塩分をどんどん取り入れて、細胞の外を酸性にします。すると、細胞分裂が活発になります。もうこの細胞は正常細胞とは似ても似つかない顔つきになります。

胃の細胞は、どんなに細胞分裂しても胃にしかならないし、形や機能が変わることはありません。設計図通りに細胞分裂します。ところが、ブドウ糖だけで生きるようになったがん細胞は、胃にはならず、ただの肉の塊としてどんどん細胞分裂をしていきます。そして、どんどんブドウ糖を取り込めるように血管も作り始めます。自分勝手な細胞ですね。

がん細胞を調べるPET-CTという器械があります。これはがん細胞がブドウ糖を取り込む能力が高いことを利用して、ブドウ糖に似た放射線薬剤を体に入れ、薬剤が集まっている部位を特定する器械です。

がん細胞の唯一の餌はブドウ糖です。次回はさらに深掘りします。