機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(14)

チョッとためになる健康のお話(14)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

「ためこみ症」という疾患

冬の寒い中でも、梅や水仙は健気に咲いてくれます。少しずつ日が長くなり、春の足音を感じるこの頃、いかがお過ごしですか。

かあさんのあかぎれ痛い/生みそをすりこむ/根雪もとけりゃ/もうすぐ春だで/畑が待ってるよ/小川のせせらぎが聞こえる/懐かしさがしみとおる

「かあさんの歌」の3番です。私は長野の山あいの村で育ったので、冬は農作業がなく、母はよく裁縫や毛糸の編み物、布団の綿替え、炭を入れる俵編みなどをしていました。雪がとけるのをじっと待つかあさんが、母とだぶります。

母は片づけ上手だったので、家の中が散らかるということはありませんでしたが、布の端切れや箱などは大事にしまっていました。物がない時代だったので、どこもそうだったかもしれません。しかし、片づけが元々苦手という方もおられると思います。

好きなものをどんどん買い込んで山積みにしたり、食べた後の包装紙やビニール袋を片づけられない状態を「ためこみ行動」と言います。そういう人は、20人に1人の割合でいるそうです。そして2013年、アメリカ精神医学会では、この行動が進んだ人を「ためこみ症」という疾患に認定しました。

2011年に近藤麻理恵さんが「人生がときめく片づけの魔法」という本を出版して、ブームになりました。私も買って読み、一時、実践していました。「今必要ないものは捨てる」が基本なのですが、そのうち使う、もったいないとためこむより、片づけることによって気分が晴れ、「今必要なことが見え」てきて、とても有益でした。まだ使えるものでも「ありがとうございました」と言って、捨てています。

「片づけとは人生を片づけること」という言葉は、私の座右の銘になりました。

しかし、現在3児の母となった麻理恵さんは、片づけをやめたそうです。それは自由奔放な子供たちと暮らす中で、片づけより、楽しむことを優先するようにしたからです。それはそれで素晴らしい選択だと思います。

さて「ためこみ症」の原因ですが、中には認知症、統合失調症、強迫症、発達障害もあるようです。そして、その症状は3つあって、①ものを大量に集める②整理整頓ができない③捨てられない、です。洗面台や風呂場、台所、床面などの生活空間がちゃんと機能しているかどうかが診断の見極めになるそうです。重要なポイントは物に対する愛着や執着がものすごく強く、物を捨てるというのは「体の一部を取られるようだ」と感じたり、ゴミではないと言い張ることです。発症する時期は、子供時代であれば、両親の離婚や虐待、成人してからは家族の死別や失業が引き金になることが多いそうです。精神的な問題が原因であれば、まずそれに取り組む必要がありますが、対処法としては、①インターネット購入など、入手に制限をかける②食べた後の始末、使ったら元の場所に戻すなど、身近な人が一つひとつの行動を指導する③書籍や洋服など腐らないものでも期限を決め、過ぎたら捨てる。

人間はきれいなもの、整頓されたものを見ると気持ちが晴れ、汚れたもの、混乱したものを見ると曇ります。心の健康に環境整備はとても重要ですね。