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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」愛の知恵袋 191

愛の知恵袋 191local_offer

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

夫婦こそ、一番の友達でありたい

結婚後、寂しい関係になってしまった夫婦

結婚して数年になるというご夫婦からの相談でした。妻のA子さんによれば、たまたま公園に散歩に行ったとき、ジョギングに来ていたB男さんと挨拶を交わしたのがきっかけで、好印象を抱いて自分もジョギングを始めたそうです。休憩中に交わす話がすごく楽しくて意気投合し、交際期間を経て結婚に至りました。

しかし、結婚後、二人の間が気まずくなってしまいました。A子さんは「疲れるから…」と言って、夫から誘われてもジョギングには行かなくったのです。

アウトドア派のB男さんにはそれがとても不満で、それからはうっぷんを晴らすかのように休日も釣りや山登りに友人たちと出かけるようになりました。

A子さんは、結婚後、夫との会話が減ってしまったことが不満で、寂しさを紛らわすために本来好きだった音楽や映画鑑賞に友達と行くことが増えたといいます。

共通の話題がなくなると、二人の親密な会話もなくなってしまい、たまに口を開くと喧嘩になってしまうという状態になりました。今では離婚のことも頭をよぎるようになってしまったというのです。

男の欲求と女の欲求の違い

交際中は共有する時間をもって楽しい会話をしていた二人が、結婚してからは会話が減ってしまい、出産後にはお互いの無理解や不親切を非難し合うようになって冷え込んでしまうという事例はよくあります。

夫のB男さんに聞くと、一番の失望は「妻が結婚後も喜んで遊び友達になってくれるだろうという期待が打ち砕かれた」という点にありました。

一方、妻のA子さんの不満は、「夫は結婚後も楽しい会話をしてくれるだろうと思っていたのに、全く裏切られた」というところにありました。

幸せを信じて結婚した二人が、なぜこんなことになってしまったのでしょうか?

著名な心理学者のウィラード・ハーリ博士によれば、「男と女では相手に期待することが非常に違っている。それを理解できていないために悲劇が生じている」と言います。では、男と女ではどのように違っているのでしょうか?

「女が男に期待する五つの欲求」=①愛情表現、②楽しい会話、③誠実さと率直さ、④経済的安定、⑤子供との交流時間。

「男が女に期待する五つの欲求」=①性的充足、②遊び仲間であること、③魅力的であること、④内助の功、⑤賞賛の声。

このように、男と女とでは相手に期待することにが大きく違います。このような認識のずれがしばしば夫婦の心のすれ違いを引き起こし、結婚生活の破綻を招くのです。

A子さんとB男さんの場合は、まさにこれが夫婦の葛藤の原因になっています。「この人なら…」と相手に期待していたのに、結婚後その思いが裏切られてしまい、二人の間に失望と怒りの思いが生まれて愛情関係に亀裂が生じてしまったのです。

夫婦が幸せを満喫するには、夫も妻も互いに「相手が求めている欲求がなんであるのか」をよく知って、それを満たしてあげることが不可欠です。

夫婦で共通の趣味を見つけよう

私は趣味、嗜好がかなり違うこの夫婦に、”二人が時間を共にできる共通の趣味を見つけること”を提案しました。

まずは歩み寄りが必要なので、「一度でも相手の趣味に付き合ってみてください。そうして、二人の願いが共に叶う共通の趣味を見つけましょう」と話しました。

3カ月後、A子さんから電話があり、「先生、見つけました! とてもいいです。うまくいきそうです!」という報告をいただきました。

あれから、A子さんはB男さんを誘ってコンサートに行き、カフェでおしゃべりをしたそうです。また、B男さんはA子さんを誘って高原のドライブやハイキングに行ってみたとのこと。そうして、見つけたのが「月に一度のデートタイム」でした。

春夏秋冬、年に4回は日帰りドライブか1泊2日のミニ旅行をする。そして、その合間は月に一度、二人で街に出かけて散策し、外食とおしゃべりをすること。

「二人で次のプランを考える時間も楽しいし、行けばもっと楽しい会話ができて悩みは解消です! 夫はやっぱりいい人でした!」と声が弾んでいました。

私たちの家庭は現実的な多くの事情を抱えているため、仕事に追われ、子供にかかりっきりになったりして余裕を失いがちです。その中でいつしか夫婦の本音の対話や愛情確認がおろそかになり、疎遠になっていくことがあります。

夫婦の絆は家族の根幹です。そこが不完全では家族の幸せは生まれません。

忙しい中にも、ぜひ、どんなことでもよいので、手が届く範囲で、夫婦で楽しめる共通の趣味、共通の時間を見つけ出して、実践してみてはいかがでしょうか。

幸せは、どこかにあるものでも、いつか来るものでもなく、二人で創り出していくものだと思うのです。