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2014年8月の「家庭の日」メッセージ

家庭の価値重視で児童虐待防止を

全国の児童相談所(児相)が昨年度に対応した児童虐待件数が73765件で過去最高となりました。日本の家族がどれほど危機的状況にあるかを示す数字です。

わが国では、平成12年に児童虐待防止法が成立。しかし、児相の対応件数は調査を始めてから23年連続で増加し、まったく歯止めが掛かりません。

もちろん、政府や行政は防止の努力を行っています。対応する児童福祉司を過去23年間で約2.5倍に増やしましたが、虐待の増加率はそれを大幅に上回る約67倍。これでは十分な対応ができるはずはありません。しかも、密室で行われる虐待は顕在化しにくいのですから、冒頭の数字は氷山の一角と考えるべきです。

本来、最も信頼していいはずの親から暴力を振るわれたり、ネグレクト(育児放棄)されたりする子供が大勢いることを思うと胸が痛みます。児童福祉司を増やすほか、被害を受けている子供を早期に保護するため、児相と警察の連携を強化するなどの対策はとられています。

しかし、現在のように、対症療法が中心の努力では、虐待を減らすことはできません。せいぜい可能なことは早期発見で深刻な事態を減らすことでしょう。それだけでは親からの暴力で心が傷つき、健在な社会生活ができなくなる子供がどんどん増えてしまいます。

児童虐待の背景には、社会の単位を「個人」と考えて家庭の価値を軽視し、ひいては地域社会の絆を弱めてしまったことがあります。その価値観が自己中心的な大人を増やし、その犠牲となっているのが子供たちです。

1878(明治11)年に日本を訪れた英国の女性旅行家イザベラ・バードはその著書『日本奥地紀行』で、「私はこれほど自分の子供に喜びを覚える人々を見たことがない」と、日本人を賞賛しています。児童虐待防止の核心は、かつて日本にあった子供を大切にする豊かな精神文化を取り戻すこと。つまり、エゴイズムを助長させた歪んだ個人主義から家庭重視に価値観を転換することがその第一歩となるのです。