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2017年9月の「家庭の日」メッセージ

虐待防止に必要な結婚教育

2016年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数が26年連続で最多を更新し、約12万2600件に上ったことが厚生労働省のまとめで分かりました。この統計ほど、昨今の家庭崩壊の深刻さと、家庭再建運動の重要性を示すものはありません。しかし、事態の深刻さに反して、政府の対応の鈍さが気がかりです。その背景には、虐待がもたらす子供への悪影響に対する認識不足があるようです。

毎年11月は「児童虐待防止推進月間」ですが、これに合わせて昨年行われた全国フォーラムでは、専門家から衝撃的な報告が続きました。東京大学大学院の遠藤利彦教授は、乳幼児期に他者への信頼感を築けなかった場合、成人後に通常の4倍の身体症状を訴えるようになると述べました。幼い時期に虐待を受けた場合、他者への信頼感が築けなくなることは説明するまでもないでしょう。

また、福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授は「たとえ心理的虐待でも、脳に影響を及ぼす」と語り、虐待による健康への影響、その結果としての生活不適応とそこから生じる社会的損失の大きさを訴えました。

現在、政府や行政が取り組む虐待対策は、早期発見や被害児童のケアなど、起きた虐待への対処です。もちろん、虐待による被害を深刻化させないような努力は大切です。しかし、専門家が指摘するように、心理的虐待でも子供に深刻な影響を及ぼすことを考えると、夫婦の家庭生活を健全に営めるようにしながら、虐待が起きないように後押しする施策がより重要であることが分かります。

その第一歩は、結婚は夫婦の幸せだけでなく、生まれてくる子供の人生をも左右する大切な営みであることを知らせる結婚教育です。個人の結婚や家庭生活に介入しないというのがこれまでの政府の立場でした。しかし、このまま一歩踏み込んだ対応をしなければ、被害児童が増え続けて日本の将来を危うくすることを示しているのが児童虐待なのです。