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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

桜の花がほころぶ、フレッシュマンの季節に

新聞記事になることなど滅多にないし、おそらく統計などもないであろう。だから、直観でものをいうしかないが、この1、2年、東京都内のJRやメトロ、私鉄のホームで電車と人との接触事故が随分と増えているような気がする。

電車に乗っていて「○○線は△△駅ホームでの接触による人身事故のため現在、大幅な遅れが出ています」というお詫び放送を、よく聞くようになったからだ。以前はこんなに頻繁でなかったように思う。

駅のホームでは「危険ですから、黄色い線の外(線路)側を歩かないでください」という放送を繰り返して安全歩行を呼びかけている。にもかかわらず、そんな注意はどこ吹く風、あるいは馬耳東風とばかりに知らん顔をして守らない人が少なくない。そういう不心得者が事故を招き、電車が止まって何万、何十万人もの通勤・通学の人が迷惑する。

雑誌編集者の友人が、いつも駅のホームでは絶対に最前列には立たないように気をつけているというのを聞いたことがある。仕事柄、誰かに恨みをかってしまい、事故に見せかけて巧妙に突き落とされることもないとはいえない。だから、用心に越したことはないというわけだ。

そういう怨恨ごとでなくても、そんなところに立っていて、何かの弾みでぶつかって撥ね飛ばされ、運悪くそこに入ってきた電車とぶつかって…という最悪の事態のリスクをわざわざ背負うこともない、ともいう。

それを聞いたとき、つい「いくら何でもそこまでは」と、その逞しい想像力をからかい、つい笑ってしまったのを思い出す。それが最近は、笑えない光景に出くわすことが少なくない。走り出した電車と肩が20センチほどしか離れていないのに、平気の平左でホームを歩いている人。危険を感じられない無神経というか余りの想像力の乏しさに、今度は唖然として凍りついてしまう。

4月。桜の花がほころび、フレッシュマンの季節が始まる。前述の無神経を反面教師にリスクを回避する想像力を適度に働かせ、学園で職場で始まる新生活をしっかりと踏み出してもらいたい。