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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

初夏を告げ“緑を運ぶ”元気印の風

春の訪れは土から、秋は空から感じられると言われるが、では夏はどこから? 風の便りから、すなわち薫風である。「薫風」を辞書で調べると、角川国語辞典では夏の季語だとして「初夏にふくさわやかなかぜ」とある。

うーん、何かイマイチ足りないなと「広辞苑」を開くと「(11)南風。温和な風——」の次に「(12)青葉の香りを吹きおくる初夏の風。青嵐——」とつづく。そう、これなのだ。

花の甘い香りとともに、少しけだるい空気も混じる春の風は、どことはなしにのどかさと怠惰の誘いが宿っている。これとは違って、風薫る5月の南風は、さわやかで元気が湧く初夏の風である。

5月が1年で最も過ごしやすい月であることは大方が認めるところだが、それもこれも薫風に負うところが大きい。心身ともに癒される緑が最も美しくなる月であり、その鮮やかな新緑の香りを運ぶ風がさわやかだからだ。

風にそよぐ葉の緑色も、微妙に濃淡が違って奥が深くバリエーションが広い。黄緑、若草、萌黄色、松葉、青緑、常磐、若竹色などいろいろ。春の草木に芽吹く淡い緑は、まだおぼろげで幼く、どことなく不安げで頼りなかったが、この頃は個性の違う緑色の落ちつきが、そのまま人の心を安らがせるのである。

二十四節気のひとつで、夏の始まりを告げる「立夏」は、子供の日の5日。「山野に新緑が目立ちはじめ、夏の気配が感じられ」るころ。同じ日の七十二候は「蛙始鳴」で「かえるが鳴き始める」ころである。このあと10日「蚯蚓出」、16日「竹筝生」と続いて、21日が「小満」。「草木が成長して生い茂る」頃となり、田植えの準備などを始める季節を迎える。

都会でも街路樹の緑がひと際映え、命の勢いのオーラーを発散する。改めて、自然を大切にし、風が仲介する自然との緑と命の交流によって”元気”を持続したいと思う。