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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

梅雨に花、花の大陸、花の島から

二十四節気の芒種(=5日)と夏至(=21日)のある6月は、うっとうしい梅雨と真夏の季節である。「梅雨入りの前で昔の田植えの開始期」の芒種に対し、夏至は「1年で昼の一番長い日」なのだが、例年10日ごろの入梅で梅雨入りしていることが多く、実感とは少しずれが出てくる。

やはり、どちらかというと6月は梅雨の季節であり、雨に映える花の季節でもある。雨にぬれた紫陽花に、水辺の花菖蒲、ミズバショウにカラー、水の上の蓮に睡蓮。中でも白い花がひと際しっとりと映え、乾いた心を癒してくれる。

ところで、梅雨は日本全国に及ぶわけではない。北の大地、北海道だけは梅雨と無縁だといわれ、富良野のラベンダー、北竜町のヒマワリ、サロベツのエゾカンゾウなど、紫や黄色の初夏から夏を謳歌する”花の大陸”に染まって別世界となる。

そんな北海道でも、北方の”花の島”といわれる礼文島は、これまた別天地である。訪れたのは一昨年の今ごろで、梅雨のそれとは違う雨や風に叩かれながら可憐な白い花と出合った密やかな思い出は、この時期がめぐってくるとともに蘇ってくる。

北海道の最北端である稚内からフェリーで2時間ほど行くと、最北限の島という礼文島に着く。”花の島”というのは、本州では2000メートル級の山でしか育たない希少高山植物の可憐な花が、ここでは少し丘に上れば手軽に見られるから。

お目当ては、この島でしか見られないレブンアツモリソウである。高さが15センチほどで、球形に近い袋状のほんのりクリーム色がかった白い花の大きさはわずか3〜5センチ。慎ましやかに咲く中で、可憐で凛とした気品にあふれ、何ともいえない魅力をたたえていた。

島の天気は変わりやすい上に、傘が役にたたないほどに風が強い。その風と雨に悩まされる中、この島だけのアツモリソウは他の植物に埋もれそうになりながら、白い花を大事に抱えていた。ガイドさんの案内がなければ見落としたかもしれないほどの小さな白い花をながめていると、自然に「守ってあげないと」という和やかな気持ちになるのである。