機関誌画像

春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

8月は夏と秋とが入り交じる不思議な月

東京・多摩の玉川上水沿いにある面積77ヘクタールの広大な都立小金井公園は、JR中央線を利用して遠出するときの私のウォーキングコースである。江戸東京たてもの園があり、紙ヒコーキのメッカであり、春はサクラ約1800本、梅100本のお花見の名所でもある。

例年、この時季になると、涼しい木陰をつくる雑木林のあちこちからは一斉にセミ時雨の洗礼を受ける。地上では1週間ほどの短い命、その時間を精一杯鳴きまくる様は、暑くもあり熱く生きる力を得られもする。

もう一つ、公園の中央付近で、燃えるような赤い花をひと際目立たせた木がある。公園全体でも数本あるだけだが、つるつるした薄茶色の木目がいかにも艶っぽい。「炎天の地上花あり百日紅」(高浜虚子)と詠まれるサルスベリは、勝負色の赤や白い花を炎天下に百日もの間咲き続けて人目を引く。

そんな一方で、上水沿いの道では早くも赤とんぼが舞う。

二十四節気の夏(大暑)は立秋前日まで。7日は、秋が立つという立秋だが、残暑の厳しい暑さは止まらない。暦の上でも「暑さが止む」とされる処暑は今月23日である。

8月は夏と秋とが入り交じる不思議な月である。月央に15日の終戦記念日があって、平和や人の生と死について自然と考えさせられる。これに、お盆も加わってくる。

あの世がこの世に降りてきて、精霊を生者が迎え、ともどもに生活する。13日に祖先の霊(祖霊)が里にやってくるのは、赤とんぼの案内。古里でまつるなすや胡瓜に割り箸の4本足をつけた牛や馬が帰りの足で、祖霊はこれに乗って16日に「送り火」に送られ、あの世に帰っていくのだという。

いまでは夏の納涼イベントと思われている盆踊りも、元来は収穫の感謝を供え物とし、ともどもに踊って祖霊と交歓し、先祖のルーツに目覚める場なのである。祖霊を感じあの世とこの世をよくかみしめる頃、暑さの中でも一陣の風に秋の訪れを感じハッとする一時がある。

「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」(古今集・藤原敏行)