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愛の知恵袋10

家庭問題トータルカウンセラー 松本雄司

同棲で得るもの、失うもの

1年半で、離婚の危機

その日の相談の電話は若い女性からでした。 「私は23歳の主婦です。夫は24歳。1歳の子供がいます。結婚して1年半になりますが、夫と毎日ケンカばかりです。『お前とはもうやっていけない、別れよう』と言われ、離婚も考えていますが、子供のこともあって悩んでいます」

「ご主人はあなたにどんなことを言っていますか」

「お前はわがままだ。やさしくない。子供のことばかりで俺のことを何も考えていない。もううんざりだ…と言ってます」

「いつからこじれるようになりましたか?」

「結婚してまもなくから時々口論にはなっていたんですが、特に3ヵ月前から深刻になりました。彼の様子が何となくおかしいので携帯メールをチェックしたら、昔の彼女と何度も会っていることが分かって大げんかになったんです。すごいショックでした。『お前とうまくいかないから愚痴を聞いてもらっただけだ』と言っていますが信じられません。子供のことを考えると別れないほうが良いと思うけど、どうしたらいいのか分かりません」ということでした。

彼女は友達の紹介で彼と知り合い、仲間で一緒に遊んでいるうちに気が合って付き合うようになり、彼が「愛している」というので一年間ほど同棲した。その頃は優しくてすごく幸せだったという。その後、妊娠したことが分かったので彼に打ち明けたら、彼も困惑した様子だった。実のところ、彼はまだ若いので結婚までは考えていなかったようであったが、彼女が「自分は堕ろしたくない」と言ったので、「じゃあ、結婚しよう」と決断してくれたそうです。

出来ちゃった婚の急増

このお二人のようないきさつで結婚する若い夫婦は、年々増えています。世の中では、「この年になってまだ一度も経験ないなんてキモーイ!」とか、「経験積んでおいたほうが、結婚したときにうまくいくんだ」とか、まことしやかに言われています。本来は社会を善導すべき使命のあるメディアが、それをあおっている傾向すら見受けられます。果たしてこれらの風説は正しいのでしょうか?

青少年の性行動は年々派手になり、都内の高校生対象アンケート調査でも、高3女子生徒の性体験率が50%を越えています。また、それと共に、結婚前の男性と女性が同棲生活をするケースが増加し、その結果、1990年代から「妊娠したので結婚することにした」といういわゆる「出来ちゃった婚」「おめでた婚」が急増し、一種の社会現象とさえなりつつあります。厚生労働省の調査では、嫡出第一子出生数のうち、妊娠期間よりも結婚期間のほうが短い割合(つまり、結婚前に妊娠していた子)は、1980年では、13%であったものが、2000年には26%になり、2倍に増えています。さらに、若いほどこの割合は大きく、20〜24歳で出産の子は58%、15〜19歳では、実に82%にのぼります。

同棲経験は、結婚生活にプラス?

結婚前の男女の同棲生活は是か非か—が論議されるとき、賛成派は「相手をよく知って結婚できるから良い」と言い、反対派からは、「新鮮さが失われ結婚に感動がない。道義上も問題」といった声が聞かれますが、実際はどうなのでしょうか。

この問題では、アメリカで研究が進んでいるようですので、その報告に目を向けて見ましょう。パトリック・F・フェイガン氏のレポートです。(氏は元米国厚生省事務次官補で、現在、ヘリテージ財団家庭・文化問題上級特別研究員。来日時、シンポジウム「教育と家庭をどう再建するか〜米国からの提言〜」で基調講演)

フェイガン氏の報告によれば、婚前の同棲は、後の結婚生活に以下のような結果をもたらしているという。

同棲経験のない男女が結婚して離婚する確率を1とすると、

  1. 同棲していた相手と結婚した夫婦の離婚率は、その2倍。
  2. 別人と同棲していた経験のある夫婦の離婚率は、その4倍。

これはアメリカでの調査結果ですが、日本においても同様な傾向があることは間違いありません。

もちろん、同棲後結婚した夫婦や、出来ちゃった婚で結婚したご夫婦でも、その後、誠実な努力によって堅実な家庭を築いている方もたくさんおられますから、一概には言えません。しかし、少なくとも、結婚前の性体験や同棲経験は、結婚後の夫婦破綻のリスクを大きくすることこそあれ、「役に立つ」というようなものでは決してないということだけははっきりと言えます。本当に深く子供を愛しているのなら、親ははっきりとこのことを子供に言って諭すべきであり、教師も生命の尊さと、結婚まで身を守る勇気の大切さをこそ教えるべきだと思います。