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父の子育て1

コラムニスト 大森浩一郎

規律と赦し

社会人になってもしばしば遅刻する人は、いくら注意されてもなかなか直らない。その最大の原因は、約束を守る習慣が身に付いていないからだ。この習慣は、子供のころに養っておくべきものである。わが子をきちんと教育しないと、将来、社会に迷惑をかけることになる。

子供に約束をさせる場合、約束が果たせなかったときの「罰」を子供自身に決めさせることが大切だ。そうすることで、子供の主体性と責任感が育まれる。親からルールを一方的に押し付けているだけでは、いつまで経っても子供の内面は成長しないと思う。

中学生の長女が、まだ小学2年生のころの出来事だ。「夕食前に宿題を終わらせる」という約束を、長女は破ってしまった。まだ保育園児であった二人の弟たちに誘われて、つい遊んでしまったのだ。

約束を破った罰は、「夕食を食べない」ということであった。自分で決めた罰なので、皆が食事をしている中、長女は必死に耐えていた…。 そのとき、驚くべきことが起こった。普段はモリモリ食べる弟たちが、「お姉ちゃんにあげる」と、ご飯とおかずを少しずつ残したのである。

私は「ダメだ」と言い放った。一家の規律を子供に変えられては、父親の立場がなくなる。一家の主は子供ではなく、父親なのだ。弟たちは、とても悲しそうな目で私を見つめた。しかし私は、「ダメだ」と繰り返すだけであった。

しかし私は、心の中では素晴らしい姉弟愛に感動していた。思わず涙がこぼれそうになった。目に溜まった涙を子供たちに発見されないよう、そそくさと風呂に入った。

私の入浴中、妻が長女に食事をとらせたことは言うまでもない。子供を赦し、いたわるのは母親の役割である。父親はあくまでも威厳を保っているべきだ。泣きたくなったら風呂やトイレに駆け込んで、じっと我慢しよう。

規律と赦しを織り交ぜ、日常生活をドラマチックに演出すれば、子供たちの人格は立派になると思う。厳しい父親、優しい母親という、日本の古き良き伝統を復興しよう。