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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

新春の華やいだ明るさ呼び寄せ、よき年に

ああいう暇人の真似はとてもとても…と思い敬遠していたので、俳句は教科書に出てきた誰でも知っている俳人のぐらいしか覚えていなかった。それが馬齢を重ねて還暦を意識するような歳になると、歳時記を手にするようになり、いろいろな人の俳句に親しむようになった。

俳人はサッカーでいえば選手ということになり、四季それぞれの時候や天文、人事や植物のことなどをわずか17字に凝縮して表現するプロである。そんな真似ごとはとてもとても、と引いてしまっても、鑑賞するだけで近づくのなら結構気楽に楽しめる。サッカーのサポーターとして、イレブンに続く12人目としての試合参加である。

今、電車の中で開いているのは山本健吉氏の「俳句鑑賞歳時記」(角川文庫)である。採り上げられた句は氏の鑑賞眼が厳選した句ばかりだから、気楽にながめているだけでも、人を惹きつける何かが感じられる。そして、句に添えられた山本氏の解説を通して、その何かが何だったのか魅力の一端が分かると、目の前の自然や時候が以前より慕わしく見えてくるのである。

うつくしや年暮れきりし夜の空 小林一茶

冬・時候に納まる一茶の句である。「年暮れきりし」は大晦日のこと。あわただしく追われるようにバタバタ時間だけが過ぎ、いよいよ暮れも押し迫ってきて、もうじたばたしても仕方ないと観念して見上げる夜空の美しさに感じ入り、心洗われる感嘆が伝わってくるようである。

この歳時記は、四季に分けて句を分類し、別に「新年」の句もまとめている。

年踏で越の白山明けにけり 松木淡々

石川・岐阜両県にまたがる白山は富士山、立山と並ぶ日本三霊山の一つに数えられる信仰の山。その荘厳な新年の夜明けを詠んだ俳人は、享保期(江戸時代)=1716〜36年=に米寿(88歳)まで長寿をきわめた。

もう一句。中村草田男は、元旦を迎えた子への讃歌を「膝に来て模様に満ちて春著の児」と詠んだ。新春の華やいだ明るさを呼び寄せ、今年はよい年となりますように。