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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

新芽が「張り」、人も気持ちを「張る」季節が春

♪春が来た 春が来た どこに来た 山に来た 里に来た 野にも来た——子供のころに歌った「春が来た」や♪春のうららの 隅田川——の「春」や♪春の小川は さらさら行くよ——の「春の小川」などを、つい口ずさみたくなるような陽気になった。

春風駘蕩の春は、草木が芽吹き、みずみずしい花と万物がゆったりと力を漲らせる、どこかのどかで明るい季節である。

二十四節気では、一年をまず春夏秋冬の四季に分け、四季の一つ例えば春をさらに初春、仲春、晩春の三つの春に分け、それをそれぞれ二つの節に分ける。だから、四季それぞれが六つの節からなり、一年で二十四節気となる。

初春は立春(2月4日)と雨水(18日)に分けられ、3月は仲春の啓蟄(5日)と春分(20日)だから、今はまさに春たけなわ。その「春」の言葉は草や木の新芽が「張り」、人も気持ちを「張る」「晴れる」ことに由来するという説がある。

さて、先日、子女が名門の進学高校に推薦で合格した友人の頼みを受けて娘が、高校生活の心構えなどを話してきた。どんな話をしたのか?

——中学でトップレベルの成績だったから早々と推薦合格したのは立派。けど、入学までの1、2か月を安心して浮かれて過ごすと大変なことになるよ。他の人はこの期間、必死に勉強して受験するのだから。受験生活はいつも追われる苦しい日々だけど、真剣に頑張った人は結果として志望校に入った人も落ちた人も、自分で気づかず大きくレベルアップしている。だから、新学期が始まって、上位で入ったはずなのに、受験をくぐってきた人のスタートダッシュに遅れをとるってことは、よくあるのよ。

そんな忠告をしたらしい。同伴した父親からは「実は私が言いたかったことをピシッと言われ、お陰で子供もシャンとしました」と、後で感謝の電話があったという。

3月はのどかなばかりではない。啓蟄は冬ごもりしていた虫が穴からはい出てくるという意味。日脚が伸び、春分は昼と夜の長さが等しくなって暖かい季節を迎える。草木は芽を吹き、虫も動きだす。森羅万象それぞれ活動の季節となり、ボーッとしてると足元をすくわれる。川端茅舎の「啓蟄を啣へて雀飛びにけり」の句もある。早々と合格を決めた各々方、心に”張り”を持ち、くれぐれも油断することなきを。