機関誌画像

愛の知恵袋16

家庭問題トータルカウンセラー 松本雄司

おじいちゃん、おばあちゃんは有り難い

核家族の光と影

家庭問題の相談を受け始めて久しいのですが、つくづく感じていることがあります。

それは、夫婦にとっても子供たちにとっても、祖父母の存在は非常に大きな意味を持っているということです。

日本では、江戸時代はもちろん、明治、大正、そして昭和30年代までは、家族の中にお爺ちゃんとお婆ちゃんがいるのが当たり前でした。

戦後、封建制度の残骸とされた家制度が廃止され、個人を大切にする民主主義が普及しました。そして、経済の復興と高度成長時代が到来し、産業のあらゆる分野が会社化され、自営業の時代からサラリーマンの時代になりました。マイホームを持つことが夢になり、新興住宅地とマンションの建設ラッシュ、「家付き、カーつき、ばば抜き」などという言葉に象徴されるように、都会で親子二世代で暮らす“核家族時代”になりました。そこでは舅や姑に気を遣わずにのびのびと暮らせるので、若い夫婦にとっては天国のようにも見えました。それから数十年が経った今、あらためて家族のあり方を考えさせられる「核家族の光と影」が見えてきました。

祖父母は夫婦の潤滑油

まず第1に、人生の先輩である祖父母の存在は、若い夫婦の衝突と破局を防ぐ潤滑油のような役割もしていたということです。核家族になると、若い夫婦だけで気楽に暮らせるようになりました。しかし、その反面、夫婦の関係が行き詰まったとき、その間に入って仲裁したり、夫婦円満の秘訣を伝授してくれたりする”先輩としての親”がいないので、いったん始まった夫婦の衝突に歯止めがかからず、行き着くところまで行ってしまって離婚に至るというケースが多くなりました。

また、家事と育児は思ったより大変な仕事ですから、妻は心身ともに疲れてしまうことがあります。祖父母がいない場合は、たとえ子供が一人か二人でも、24時間見なければならず、一種の育児ノイローゼになることも少なくありません。

しかし、祖父母が近くにいる家庭では、ときどき孫を預かってもらって、夫婦で出かけたり、気分転換をしたりすることができ、こころのゆとりを持つことができます。

祖父母の愛は孫に良い

第2は、子供の心の成長にとって、祖父母の存在は大きな役割を果たしていたのですが、核家族になると、おおらかで奥深い祖父母の愛情を受けることが難しくなってしまいました。

孫に対する祖父母の愛情というものは、親の愛情とはひと味違っていて、とても味わい深いものだと感じています。

親は「良い学校に入れて良い会社に就職させねば…」といった欲目から焦りがでて、つい子供に「もっと勉強しなさい」「こんな成績で大学に行けると思ってるの」「私の若いときはね…」と、ガミガミ叱ってばかりになりがちです。

また、親から見ると、子供の至らないところがたくさん目につくので、必要以上に細かいことまで干渉しがちです。特に最近は少子化で子供が一人か二人の家庭が多いので、親の期待が過度にかかり、子供が押しつぶされていることもあります。その反動で高校生になって、激しく反抗したり、引きこもって不登校になったりすることもあります。

ところが、人生経験の豊かな祖父母は、あまり目先のことにとらわれず、長い目で見て孫の長所をほめてくれたり、「男の子はしっかりしないとね」とか、「女の子はそんなことをしてはいけないよ」とか、人間として大切なことであるが親では忘れがちなことを教育してくれることも多いのです。

孫を祖父母と交流させよう

このような理由から、私は子供たちには、祖父母ともっともっとたくさん交流させたいと考えるようになりました。

従って、三世代が一緒に住むか、あるいは、祖父母があまり遠くないところにいてくれるのが理想的といえます。しかし、現在では、祖父母が遠くに住んでいる場合が多いのが実情でしょう。もし、そうであるならば、せめて夏休みや冬休みなどに実家に連れて行って、祖父母と一緒に暮らす経験をさせてあげるとよいでしょう。あるいはまた、出来るだけお爺ちゃんやお婆ちゃんを田舎から呼んで、孫を可愛がってもらうというのも妙案です。

そうすれば、子供たちは大切な成長期に、お爺ちゃんとお婆ちゃんのやさしい愛情をふんだんに受けることができ、情緒の安定した子供になり、簡単にキレたりしない思いやりのある人になってくれるでしょう。そのことが将来、子供たちが大人になったとき、結婚生活に成功する力になってくれるに違いありません。

我々もいずれ祖父母になりますが、その時には、若い夫婦とうまくやっていける良き祖父母になりたいものです。干渉のし過ぎは禁物です。良き祖父母とは、若夫婦にいさぎよく全権を譲って、自分たちは一歩下がって見守ってあげながら、温かい愛情を嫁と孫たちに注いであげることのできる“物わかりの良いお爺ちゃんとお婆ちゃん”です。