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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

ソメイヨシノのあとに咲く山桜の白い花

記録的な暖冬で、今年は花の開花が早い。正月早々に梅が咲いたニュースがあったり、熱海では3月22日までの梅祭り(1月17日から)で肝心の梅の花が3月初めにはあらかた散ってしまった。

社会であれ大学であれ小・中・高校であれフレッシュマンがまぶしい4月は、日本人の心としっかり結びついている桜の季節である。バラ科サクラ属の落葉樹。「サクラ」と一言でくくっても、品種は300種を超えるという。

その最も代表的品種のソメイヨシノは、明治の初めに東京駒込・染井の植木屋から一気に全国に普及した園芸種で、江戸時代までの代表は自生種の山桜だった。葉が出るよりも先に花が開くソメイヨシノは薄いピンク色の花が華やかで、人の心を躍らせるだけでなく、人の手のぬくもりを感じさせることも日本人の心をとらえて放さない。パーッと咲き始めたかと思うと一週間ほどで散ってしまう儚さも。

気象庁が開花を観測する桜も、本州、四国、九州と日本の大半がソメイヨシノだが、北海道では札幌と函館などの他はエゾヤマザクラ、沖縄ではヒカンザクラを使っている。

さて、今年の開花一番桜は福岡市で3月13日。歴代1位の3月10日(昭和34年=1959年、和歌山・潮岬)に次ぐ早さで、平年より13日早かった。下旬に満開となり、4月には散ってしまいそう。東京も4月初めには満開となりそうだ。

ところで、明治以降、主役の座を降りたとはいえ、山桜はソメイヨシノが散ったあとぐらいから開花する。「あれっ、ここの桜はまだ咲いている」とよく見ると、花が若葉とともに咲いていて、こちらはソメイヨシノではなく山桜。武蔵野の自然の面影を残す井の頭公園(東京・武蔵野市、三鷹市)はソメイヨシノの名所だが、公園から玉川上水沿いに1時間ほど下る並木道では所々で山桜を楽しめる。

このウォーキングコースで見上げた山桜の白い花は、若葉の緑を映した白の凛とした清々しさが印象深い。

山桜を詠んだ歌に江戸中期の国学者・本居宣長の「敷島の大和心を人問はば/朝日ににほふ山桜花」がある。平安時代初期の六歌仙の一人・小野小町の「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」(百人一首、古今和歌集)も、よく知られている。