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誌上講演会

元校長、スクールアドバイザー 江畑春治

家庭教育は親子が共に育つ「共育」です

心の教育を

子供は「夢のある家庭」「苦痛を癒せる家庭」「休息のできる家庭」を求めています。

家庭は親の真の愛情により、子供のやる気と思いやりの心を育てるところです。しかし、昨今、子供たちの学力低下、そして、子供たちのいじめや少年犯罪、家庭内暴力が大きな問題となっており、子供の「やる気」と「思いやり」の心が育ちにくくなっているように感じます。

幼児の頃から十分な愛情を受けられずに育った子供は適切な対人関係をつくる能力が育たず、自己中心的で他者への共感性が乏しく感情をうまく制御(コントロール)できない幼児性を残し、年齢相応の発達を遂げないまま成長してしまいます。深刻な問題である子供たちによるいじめや少年犯罪に走るケースは、十分な愛情が伝わらずに育った子供に多いことを見ても、親の愛情が真に伝わっているかを確かめないと、どこの家庭でも起こりうることです。

心の教育はまず感性を養うことです。感性とは感じること、素直さです。お手伝いや友達同士の遊びなどを通じて、体験の中で養われます。感性が育つと理解力、判断力の大きな支えとなり、たくましく生きる大きな力となります。すなわち、感謝の心、人間関係の能力が巧みになり、信頼関係をつくる能力、洞察力、創造性、先を見通す力、危機管理能力や考える力が素晴らしく身につきます。やる気があるから考えようとし、積極的に様々な体験を心がけるようになります。やる気には正常な心の働きが必要で、それには心を満たす栄養とも言われる親の愛が必要不可欠なのです。

また、昨今の子供たちの学力低下もその源泉となる学習意欲が真の家庭の愛情というものに深く関わっています。親は、やる気と思いやりの心、感謝の心が育つように真の愛情に包まれた家庭教育環境を整えることが基礎であり、それによってはじめて学校教育の効果もあげることができるということを深く理解する必要があります。

さて、やる気と思いやりの心を育てる場合、親の愛情が子供に真に伝わらなければなりませんが、そのためには、真の愛情の伝え方を学ばなければならないわけです。

従来の教育に対する固定観念にとらわれると、教えることにこだわり、結果を求め、その結果を評価しようとします。親は子供に対して常に他人より優位な立場になることを望み、競争心をあおり、子供も親の期待に応えようと競争心を高めます。しかし、そうなると、自己中心的な考えに陥りやすく、思いやりの心も育ちにくくなります。相手の優位的立場に対し、不信感が強まり嫉妬心から正常に心が働かなくなることもあります。さらに、学習意欲の低下は不登校へとつながり、子供が不登校になるとその問題を親が抱え込んでしまい、その結果、双方共に心の余裕がなくなり、親の心を満たそうとして、子供に解決を迫り、子供はかえって反発、反抗して、コミュニケーションができなくなります。

コミュニケーションを阻むもの

ここでお父さん、お母さんに質問してみましょう。

  • 子供に言って聞かせることばかり考え、子供の言い分に耳を傾けていますか。
  • 尺度を自分の時代におき、自分のものの見方考え方を一方的に押し付けていませんか。
  • 食事の時間を、小言を並べる時間にしていませんか。
  • 兄弟姉妹や他の子供を引き合いに出して叱り、子供の自尊心を傷つけていることはありませんか。
  • 親の気分でその場かぎりのでまかせから子供と約束し、その約束を簡単に破り、不誠実な態度を子供に見せていませんか。
  • 子供の学業・成績について、親の期待が高すぎていつも努力を認めないで、けなしたり、必要以上の失望感・劣等感を持たせていませんか。
  • 父親の権力が強すぎたり(亭主関白)、母親の権力が強すぎたりして(かかあ天下)、両親の愛情にかたよりを示すような空気を作り出していませんか。

このどれかに心当たりがあるお父さん、お母さんはこれから述べる内容をご理解ください。

子供たちが問題を抱えている時に親は往々にして自分の体験からの一方的な忠告をしたり、解決し、助けようとするあまり、例えば、不登校になったときに、「学校に行かないと立派な人間になれないよ」と言って、何とか学校に行かせようとします。

子供が問題を抱えた時に親としてやってはいけないことは、命令、脅迫(注意)、説教、提案(忠告)、非難、賞賛(誉めると、裏に何かあるのかとおもわれる)、侮辱、分析、激励、尋問、評価、遠回しの表現です。

このように、一方的に教えようという親の行為はコミュニケーションを阻み、子供のやる気をなくし、反発し、反抗して新たな問題を作り出してしまいます。親が一方的に教えることばかりを繰り返していると、子供は気がつかないうちに依頼心が強くなり、考える力がなくなってしまいます。親が子供に教えるという場合、往々にして、親の心を満たすためにしていることがあるのです。そして、それは押し付けになってしまいます。

親が変われば子供が変わる

親は子供が解決しやすいように子供の悩みを心から繰り返し聞いてあげ、子供の考えていることを心で汲み取り、「共感的」に理解することが基本です。それができれば子供は愛情を感じ、信頼を深めます。そうなれば親子が本音で話し合うことができるようになります。そのうち心が満たされるので、閉じていた子供の心が開き、自分の抱えている問題に気づき、解決のためにいろいろ考えて工夫するので、解決能力が身につくわけです。ヒントは与えても問題の最終解決の責任を子供に残しておくことです。子供は自分とは別の人格であることを認識し、独力で問題を解決していく子供自身の内なる力を信じることです。子供が自分で問題を解決できれば、それは子供にとって最高の喜びであり、成長力の糧となります。

家庭教育とは親子が共に育つ「共育」です。

親は「教える」よりも「育てる」ことを優先すべきなのです。そのために言いたくなるのを抑えて、黙って聞いてあげるのです。不登校の場合、「学校に行けないのは苦しいよな。辛いよな」と共感的に理解してあげるのです。そうすれば子供は喜び、親の愛情を感じ、心が正常になります。

なぜお父さん、お母さんに心配をかけているのかに気づき、学校に行こうと思うようになります。いじめなど深刻な原因があっても親の理解があればそのことから逃げずに解決に向けて、共に立ち向かっていけるようになります。

「親が変われば子供が変わる」といいます。共感的聞き方によって子供に日々接することで、子供から相談してくるような親、信頼され、尊敬され、愛される理想の親に一歩でも近づけるように努力したいものです。