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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

「母を思い、感謝する日」のカーネーション

♪夏も近づく八十八夜/野にも山にも若葉が茂る/あれに見えるは茶摘みじゃないか/茜襷(あかねたすき)に菅の笠

立春(2月4日)から88日目に当たる2日は“茶摘み”の「八十八夜」。団塊の世代までの人なら、よく口ずさんだ唱歌「茶摘」で、間近に来た夏に思いを寄せたものだ。

緑が美しい、薫風香る5月は暦の上では夏が始まる。八十八夜は、小欄でもよく使う中国生まれの二十四節気や七十二候にはなく、日本の農家の生活上の必要から生まれてきた言葉である。緑の旬となるこの時期に摘まれて作られた茶は特に美味しいので、茶摘みの最適期を示すとともに、作物を台無しにする霜の害も八十八夜を過ぎるともう大丈夫ですよ、という季節判断の目安に役立ってきた。

暦には二十四節気などのほかに、生活の中から自然に生まれてきた民俗行事や年中行事が記されてきて、これを「雑節」と呼び、八十八夜のほか「節分」や梅雨入りを言う「入梅」、よく台風が襲来する時期として警戒した立春から210日目の「二百十日」などがある。

さて、二十四節気の立夏は子供の日の5日だが、近年の温暖化や暖冬の流れの中でゴールデンウィークを待たずに初夏が駆け足でやってくる感じだ。

ゴールデンウィークのあとは、カーネーションの花で彩られる10日の「母の日」である。米国ウェストバージニア州でミセス・ジャービスさんの命日に、その遺徳を偲ぶ追悼式を行った娘が母親が大好きだったカーネーションを参加者に手向けてもらったのが始まりという。

その日が5月の第2日曜日だったことから、1914年にウィルソン大統領が提唱し、議会がこの日を「母を思い、感謝する日」として国民祝日に制定。米国では100年近い歴史をもつ祝日だが、フリル風の花びらが何ともモダンでかわいいカーネーションの由緒の方も負けてはいない。

ナデシコ科の多年草で、季節は5〜7月。原産地は南欧・地中海沿岸といい、古代ギリシャ時代から栽培され、キリスト教との謂われもあり、西洋切り花ではバラと並んで最も多く栽培されているという。スペイン、モナコの国花で花言葉は、母への愛、熱愛、尊敬。赤、白、ピンク、オレンジ、黄などが青空と薫風の5月にひと際映える。