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誌上講演会

真の家庭運動推進協議会会長 徳野英治

人間として大切なことはすべて家庭で学べる(上)

世界で深刻な家庭問題

家庭をテーマにしながら世界の現状を見てみたいと思います。人間は果たして何のために生まれ、生きているのでしょうか。いろいろな答えが考えられますが、最も素朴な回答として、「人は誰でも不幸を願わないで幸せを願っている」と言えるでしょう。

では、その幸せはどこから生まれてくるのでしょうか。個人でしょうか、家族でしょうか、あるいは社会、国でしょうか。多くの人が同意するのは家族だと思います。お金や地位、名誉よりも大切な愛が培われるのが家庭だからです。

私の故郷は石川県で、小学校、中学校は能登半島の田舎で育ちました。東京暮らしが30年以上になりますが、やはり田舎が恋しい。なぜ恋しいのかと考えてみると、父母や兄弟がいたからです。小さい頃に友達と共に遊んだ思い出は忘れることができません。自然環境と共に家族が私たちの幸せに大変な影響を与えているのです。

家庭心理学でも、人格形成において家庭環境は60〜70%の影響があると言われます。子供たちが生まれて最初に目にする人間関係はお父さんとお母さんです。その両親がいつも喧嘩していると、子供の人格はどうなるでしょう。父親は母親の悪口を言い、母親は父親のような大人になってはいけないと言っていると、子供は人間とは信じ合えないものだと思うようになってしまいます。

サブプライムローンの破綻で始まった世界的な経済危機の問題、地球温暖化などの環境問題、北朝鮮が打ち上げたミサイルの問題、パレスチナ紛争や核開発のイラン、タリバンが攻勢を強めるアフガニスタンなど中近東の問題も深刻です。しかし、世界のどの地域にも普遍的に存在している根の深い問題は、家庭問題であると言わざるを得ないのです。

アメリカで増える継父母

私はアメリカの神学校で2年間学び、卒業後、シカゴで約1年間、さまざまな活動をしてきました。韓国では1年弱暮らし、それから昨年5月までの約3年間はアフリカで暮らし、アフリカのほぼ全部の国を回りながら活動してきました。そうした海外経験を踏まえて、今全世界で起きている家庭問題について考えたいと思います。

アメリカでスワッピングという言葉を覚えました。パーティーが大好きなアメリカ人は夫婦でパーティーに参加し、和やかに会話し、交流します。ところが時としてその二次会で、夫婦がほかの夫や妻と関係を持つ、いわゆる夫婦交換があるのです。日常茶飯事とは言いませんが、現実に行われているのは事実で、それが家庭倫理を失わせ、家庭崩壊を促進しています。

再婚家庭が多いので、子供と血のつながっていないステップファーザー(継父)、ステップマザー(継母)はざらです。アメリカにも両親の離婚を願うような子供はいません。ついに離婚となり、どちらの親についていくか選択を迫られる子供ほど惨めでかわいそうな存在はありません。

私は中国を12回訪れ、北京や上海、天津には親しい友人がいます。今なお中国は共産党一党独裁ですが、誰も共産主義が幸福をもたらすとは信じていません。ただ、多民族国家なので、この体制でないと国が保てないと思っているのです。家庭問題の観点から見ると、儒教の国である中国においても、離婚が非常に増加しています。中国以上に儒教の伝統が強く、日本以上に家族主義の強い韓国においても、離婚は確実に増えています。韓国ドラマも浮気を扱ったものが増えているでしょう。

エイズがまん延するアフリカ

私が活動していたアフリカでは、今なお一夫多妻の伝統が根強く残っています。2010年にサッカー・ワールドカップが行われる南アフリカは非常に発展していて、首都のヨハネスブルグの空港に降りると、本当にここはアフリカだろうかと目を疑うほどです。

マンデラ元大統領が登場するまでアパルトヘイト(人種隔離政策)を取ってきた南アフリカは、人権問題に対しては非常に敏感です。政府は同性愛結婚を合法化し、町のいたるところで、男性同士、女性同士の結婚式が行われています。男女平等が進んでいるのはいいのですが、半面、エイズ感染者が急増しています。人口5000万人の10分の1、500万人がHIV陽性という、信じられないほどの多さです。そして毎日800人前後の若者が、エイズで死んでいます。

南アフリカの影響を受け、隣のボツワナは成人人口の30%がHIV陽性です。そのため平均寿命は40歳にも満たず、男女の愛のモラルは想像できないほど崩れています。

どうすれば家庭崩壊を防げるのか、離婚率を下げられるのか分からないというのが世界の実情で、国連で議論しても解答は得られません。全人類が家庭崩壊の問題に悩んでいる今こそ、家庭再建が社会再建の唯一の道であると訴える必要があります。

家庭が社会再建のポイント

アフリカやアメリカに比べれば日本はしっかりしていて、平和で豊か、安全なのは事実です。北朝鮮がミサイルを撃つという日にも、多くの国民が花見に興じているのですから。でも、そんな日本で、なぜ毎年3万人以上の人が自殺するのでしょうか。交通事故の死者のほぼ4倍です。明らかに日本に生きる哲学が失われているからで、何のために生きるのか、その哲学が乏しいと言わざるを得ません。その問題を掘り下げると、家庭が崩れてきている問題に突き当たります。

日本においても離婚率は増加しています。そして、夫婦が殺し合う、親子が殺し合うという事件が頻繁に起きています。家庭とは一体何か、家庭はどうあるべきなのか、結婚はどうあるべきか、そもそも男性とは、女性とは何か、そこまでさかのぼらないと、家庭問題に対する根本的な解答を得ることはできません。

家庭問題ほど深刻な問題はありません。なぜなら、人間社会の基本が家庭だからです。家庭が集まって地域社会ができ、国家、世界へと拡大しています。家庭が崩壊すれば、社会が崩壊し、国が崩壊し、やがては世界が崩壊してしまいます。その意味において、家庭再建こそが、社会・国家の再建の最も重要なポイントであると断言できます。(つづく)