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父の子育て10

コラムニスト 大森浩一郎

「近所の父」を目指そう!

昔は、近所に怖いおじさんが必ず一人はいたものである。私が子供のころには二人もいた。一人が同じアパートのおじさん、一人が豆腐屋のおじさんだ。「道路に飛び出すな!」「あいさつの声が小さい!」「小さい子をいじめるな!」などと叱られたものだ。このおじさんたちは、子供だけではなく大人に対しても叱っていた。

反対に、優しいおばさんもいた。良いことをしたらお菓子をくれ、私の母に「コウちゃんは、こんなに良いことをしたのよ」と報告してくれた。このおばさんが他人の悪口を言っているのを聞いたことがなかった。そして、やはり子供たちだけでなく、近所の悩める大人たちの相談に、よく乗ってあげていた。

つまり、近所の怖いおじさんは「近所の父」、優しいおばさんは「近所の母」だったのだ。

ところが最近は、他人を叱る人、他人をほめる人が少なくなった。この風潮が少年犯罪を助長したり、子供が死ぬまで虐待に気づかない地域社会を作り出したりしている。これではいけない。私は「近所の父になりたい」と強く思うようになった。

数年前、町内の集会に家族で参加した。子供連れの参加が許されていたが、講演を聞くことがメインの集会である。子供が騒いだら、退室して落ち着かせるのが礼儀だ。

ところが、ある親は自分が講演を聞くことに夢中で、子供を野放しにし、他人にたいへんな迷惑をかけていた。私はその子供を捕まえて叱り、その親にも注意をした。

近所の人々を叱るためには、日頃から「情の基盤」を築いていなければならない。私は、わが子と屋外で遊ぶときには、近所の子供たち、さらにはその親たちと積極的に接するようにしている。

信頼関係がないままに叱っても、かえって反感を抱かれ、傲慢なおじさんだと思われてしまう。「叱る」ということは本来、信頼を土台とした愛の行為なのだ。

今の日本には、「近所の父」がたくさん必要とされている。自分の子供を正しく叱ることができるお父さんは、ぜひ家庭から外へ出て、「近所の父」となることを目指してみよう。