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父の子育て11

コラムニスト 大森浩一郎

読み聞かせの連鎖

私は学生時代、アルバイトで学習塾の数学講師をしていた。高校受験を控えた中学生を教えていた。数学の応用問題が解けない生徒が、実に多かった。

「公式を暗記しているのになぜ解けないのか?」と、教える立場の私もずいぶん悩んだ。彼らからいろいろと話を聞く中で、「問題の文章が何を言っているのか分からないから、公式を知っていても問題が解けない」ということが判明した。

つまり、数学力ではなく国語力(読解力)がなかったのだ。

子供の教育にとって、本の「読み聞かせ」が効果的であると叫ばれて久しい。昔から「読み、書き、そろばん」といわれるように、読むことは勉強の基本となるものだ。

わが家でも、長女がゼロ歳児のときから絵本を読み聞かせた。そのかいあって、中学生になった今でも読書が好きである。学校の休み時間も、ほとんど図書館で過ごすそうだ。だから、スポーツはそれほど得意でないが、国語はまあまあの成績である。

2歳下の長男、さらに2歳下の次男には、あまり読み聞かせができなかった。二人目以降になると、家事や仕事などが忙しくなるからだ。長男が小学生になるころには、「息子たちには、すまないことをしたなあ」という気持ちでいっぱいになっていた。

ところがある日、妻から驚くべきことを聞いた。長男はクラスで「国語博士」というニックネームで呼ばれている、というのだ。つまり、国語の成績がクラスで一番なのだ。

「読み聞かせが十分にできなかったのに、なぜだろう」

疑問に思ったが、ほどなく解答が得られた。

いつもより早く帰った私は、長女(当時9歳)が長男(当時7歳)に本を読んであげている現場を目撃したのだ。わが家は夫婦共働きのため、小学生の長女と長男は、帰宅すると二人で過ごしていた。その時間、長女が長男にいろいろな本を読み聞かせしていたのだ。

さらに、長男が保育園児の次男をつかまえては、本を読み聞かせるようになった。読み聞かせの連鎖が起こっていた。ありがたいことである。

現代は何かと忙しく、親が子供と過ごす時間は少ない。しかし、上の子供に「本を読む楽しみ」、「聞いてもらう楽しみ」を学ばせれば、下の子供に受け継がれる。お兄さん、お姉さんは、親の名代なのだ。