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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

君は神宮外苑・銀杏並木の“黄金の輝き”を見たか!

「くらがりへ人の消えゆく冬隣」角川源義。日足の早いのに驚き、朝晩に忍び寄る冷え込みを感じる11月(霜月)は、冬入りを告げる二十四節気の立冬が7日、寒さもまだ厳しくなく雪もまだ大ならないという意味の小雪が22日である。暦の上では冬となるが、自然はまだ冬にバトンタッチする前の秋が頑張っている。晴れた日の昼間は、まだ小春の日和が続きそうである。

だが、立冬で陰暦10月、月の異名・神無月に入るこの日は、七十二侯では「山茶始開」とある。関東では空っ風が吹き、山茶花が咲きはじめるという解説から、年配の人の中には〈たきび〉の歌と焼けたアツアツのイモを頬張った少年の日を懐かしく思い出す人も多かろう。

その歌詞の2番は♪さざんか さざんか さいたみち たきびだ たきびだ おちばたき——と、今では消えてしまった冬の風物詩を蘇らせてくれる。

そんな秋と冬とが併存する季節の”黄金の輝き”を鮮明に心に刻んでくれたのが、東京・神宮外苑の四並列の銀杏並木である。

3年前の11月半ば。神宮外苑は何度も行っているが、わざわざこの時期に出掛けたのは、その一週間前の読売夕刊に掲載された一枚のカラー写真に魅せられたからである。幼い子供の手を引いて並木道を歩く親子連れの写真は、足元の落ち葉が黄金色の輝きを放っていた。

それを確かめたくて行ったのだが、実際の落ち葉はまだ黄と緑が半々。銀杏独特の匂いが少し鼻をくすぐる並木のトンネルから見上げる木の葉の方は、まだ薄緑色の葉の方がはるかに多く、期待は外れたと思った。

「銀杏は、現存する最も古い前世界の植物の一つ」で「1億5000年前、巨大な恐竜が棲息していた時代に地球上に広く分布」していた樹種だと解説する案内板を眺めながら〈あの写真は特別のフィルターで撮ったのかなあ〉と思いを巡らせていた。

すると、辺りの景観が急に変わってきた。オレンジ色の夕日に照らされた頭上の扇状葉が、まるで魔法を見るように黄金色に輝きはじめたではないか。それはほんの短い時間であったが、自然の光がつくり出す”イルミネーション”のまばゆいばかりの輝き。

その光のシャワーを浴びながら、東京に、こんな幻想的な世界があったのか、と今でも感動が蘇ってくる。