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父の子育て 22

コラムニスト 大森浩一郎

ペットを飼う効果

2年前のこと。動物好きの長男(当時10歳)が「ミシシッピーマスクタートル」というカメを飼いたくて、ほぼ1年かけて家事を手伝い、お小遣いを貯金し、購入した。その執念には私も脱帽であった。

このカメは珍しい種類らしい。長男から名前を聞いてインターネットで検索しても、あまりヒットしなかったほどだ。そんなカメの存在を、いったいどこで知ったのやら…。それだけに、普通のミドリガメやゼニガメよりも高価だ。水温も一定に保たないといけないため、いくつかの装置もそろえなければならないので、余計に値が張った。

楽ではないお手伝いに1年間も耐え、やっと貯めたお金で買った全長わずか5センチのミシシッピーマスクタートルに、長男はカメキチという名前を付け、可愛がった。週2〜3回は水を取り換えなければならないため、その日初めての交換作業をしていた。その最中、なんとカメキチが逃亡してしまったのだ!

いくら探しても見つからない。カメキチに裏切られた思いだったのだろう。長男は、ガックリと肩を落としていたそうである。

その時刻には、私も妻も仕事で不在だった。長男と次男は慌てふためいていた。しかし、12歳(当時)の長女が、机の下の隅に隠れていたカメキチを冷静に探し出した。

「小さいカメだから遠くには行けないし、いつも水槽の隅で隠れるようにしていたから」

そういう推理で、めぼしい場所をピンポイントで探索し、見事に捕まえたのだ。

この事件で長男は、次のことを学んだそうである。

「ぼくはカメキチを好きだけれども、カメキチは、ぼくをまだ好きになっていない。もっとカメキチのために生きないといけない」

「ぼくや弟だけではカメキチを探すことができなかった。スポーツが苦手なお姉ちゃんを少しバカにしていたけど、やっぱりお姉ちゃんは頼りになる」

ペットを飼うことは、子供の教育にとって益にも害にもなり得る。その点を親がしっかり理解して見守ってあげれば、「どんな出来事があっても、それは学びの体験になる」と私は思っている。