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誌上講演会

教育カウンセラー 冨田 辰夫

若者に「愛を育てる」喜びを

『男たちの非婚時代』や『非婚時代—女たちのシングル・ライフ』の書籍が書店に並んでからまだ間もありませんが、今や時代の流れにしっかり定着してしまいました。「未婚」から「非婚」に向かう流れが加速化し、少子化もあいまって日本の未来は大きく揺れています。

総務省の推計人口(4月1日現在)によると、日本の子供の数(15歳未満)は、前年比9万人減の1693万人で、30年連続で最少を更新。一方、国連が発表した2100年までの世界人口予測によると、日本は2010年の1億2600万人から約9130万人に減少。平均寿命は女性95歳、男性は89歳まで伸びると予想。その時、少子高齢化社会は国家存亡の極限状態を迎えていることになります。

かといって「日本の国のために子供を産んでくれ!」が通じる時代ではありません。若者の結婚観は国の未来を大きく左右します。情報の激流の中で生きる若者たちに、どんな情報を届けていくかを、今、真剣に検討しなければならない段階を迎えています。

若者たちの結婚意識と現状

何十社も面接シートを書き込み、必死に取り組んだ「就活」のあとに待つのは、「婚活」。結婚願望を持つ若者たちは涙ぐましい努力をしています。フリーターや若者貧困の増加で結婚に踏み切れない現状も確かに否定できませんが、原因はそれだけではないようです。

未婚率は30〜34歳が男性47%、女性32%、35〜39歳が男性30%、女性18%。10年前に比べてそれぞれ7〜12ポイントも上昇。生涯未婚率(50歳時の未婚率)は男性16%、女性7%と、10年前から倍増(国立社会保障・人口問題研究所調査)。男女ともに、約9割が「いずれ結婚するつもり」と言い切る願望と現実の大きなギャップがそこにあります。少子化の大きな要因に、晩婚化は見過ごせません。

晩婚化をもたらす要因

①結婚観の変化

男とは?女とは?という問いはいつの時代にもあったことですが、時の社会環境と経済事情の変化の中でその解はいつも揺らぎ続けてきました。まだ社会組織の中に女性の入る隙間が少ない時代、結婚も「嫁(とつ)ぐ」という言葉に象徴されるように、女性が男性の家に入り、姓も改め、良き嫁として生きることが幸せの第一歩でした。夫婦喧嘩をして実家に戻っても、両親が叱りつけて夫のもとに戻したという話がよく聞かれた時代です。

しかし、1985年に男女雇用機会均等法が施行されると、女性の社会進出がブームとなり、男たちの称号であった企業戦士の一員に女性も頭角を現すようになってきました。情報技術の進歩で、女性が実力を発揮できる環境が増えてきたことも追い風となりました。

そのことが女性にとって「離婚」のハードルを低くしたことも事実です。以前なら離婚しても食べていくことが簡単ではなかった時代から、努力すれば一人でも食べていくことができる時代を迎えたのです。

しかし、この前後に就職をして、その後のバブル景気も享受できたアラフォー世代(40代)のアグレッシブさと比べて、その後、アラサー世代(30代)の保守化が目につきます。この世代の人は、やりたいことが特になかったり、あるいはバブル崩壊以降の経済的に苦しい時代を過ごして、「生きていくのに精一杯」みたいなところがあったりします。

また、男たちと肩を並べて闘うことにあくせくする、アラフォー世代の先輩の姿が、決して幸せとは思えなくなってきました。「そこまでしなくても〜」と、自分の身の丈で満足する女性たちが大量に生まれ始めました。

その遺伝子を引きついだ20代の女性たちは、「男は仕事、女は家庭」の抵抗感がさほど強くありません。だからといって、簡単に家庭に収まる気配もありません。

「婚活」という言葉が市民権を得て、若者全体に「結婚したいなら婚活しなきゃ」みたいな雰囲気が当たり前になってきたように感じます。そこにある価値観は「結婚することで人生にプラスαがもたらされる、あるいはもたらされるべきだ」と考えている若者たちが多いようです。このプラスαは経済的な面はもちろん、精神的な面も含めてです。だから「プラスαのない結婚はしたくない」「質の悪い結婚なら嫌だ」とリスクを徹底的に避けようとする傾向が見られます。

その影響を受けてか、男性たちも「いつかはできると思うが必然性を感じない」「女性と一緒に過ごすことよりも楽しいことがある」など、女性たちが発していた「結婚のメリットが分からない」を、男性も口にする時代を迎えています。

結婚をメリット、デメリットで計る若者たちにとって、今や結婚は陳列された商品の1個にすぎなくなってきているのです。欲しいけど、無理してまで手に入れるものではないのです。「女性は結婚しなくても十分に幸せな人生をおくることができる」(2008年、読売新聞調査)と思う女性は約6割。結婚相手が私にメリットを与えてくれるかどうかが大きな選択基準となっているのです。

②「愛」と「性」と「結婚」の分離

前述のように現代の若者たちは無限大の情報の渦中にいます。特に、性情報の蔓延は多くの課題を突きつけています。

結婚する男女でも「結婚後にはじめて性関係を結ぶ」といった感覚は、現代の若者には皆無です。「愛があれば性関係はかまわない」といった考え方が大半であり、その「愛」も揺れる今、相手をつなぎとめておくために、先に「性」ありきの感覚も蔓延しています。

メール・コミュニケーションが当たり前の若者文化は、「KY(空気が読めない)」のレッテルを貼られないために、目覚めてから寝付くまで、何十回もメールチェックに勤(いそ)しみます。文字コミュニケーション文化の中で育った若者たちは、対面した心のコミュニケーションが苦手となりました。大手企業が新入社員を採用する際に、最も重視することが「コミュニケーション能力」というように、表情から相手の心をくみとり、言葉の響きから相手の気持ちをうかがう感性、能力などは大きく衰退しました。

特に、男女関係においては顕著です。恋愛は最も心の交流が求められますが、それが大きな壁となっているのです。つい先日までは「告(こく)る」の次は「つき合う」、そして「性関係」(かつてなら結婚が先ですが)と続いていましたが、今や、「告る」=「性関係」なのです。愛を語り合うのは面倒だけれど、性関係なら手っ取り早いという感覚です。したがって、告っても三か月以内に性関係が持てない相手なら別れた方が無難と考える時代なのです。

「愛があれば性関係はかまわない」の時代は既に過ぎ去っているのです。

さらに、女性雑誌を中心に性情報の氾濫はとどまるところを知りません。「男をゲット」するハウツー特集がさらに女性の性感覚をマヒさせています。かつて簾(すだれ)の向こうに隠れていた女性の性意識が、今や大手を振って街角を闊歩(かっぽ)しています。「うぜ〜!」「だっせ〜」などの醜態言語を発しながら、いまにも噛みつきそうな顔で簾を捲られると、男性たちも引くしかありません。「草食系」も、好きでそうなったわけではないかもしれません。「肉食系」のように得物を追いかけたくても、返り討ちにあう恐怖の方が大きいのです。

そのためでしょうか、女性の化粧の動機は、以前は明らかに男性を意識していたはずですが、今は、女性から「かわいい〜!」と評されることに大きなウエートを置くようになりました。男性は自分を取り巻くただの風景の一部になり下がりつつあるのです。

氾濫する性情報の中、多くの異性関係を経験する若者たち。彼らは性の解放を手に入れた代償として、生涯かけてパートナーと共に愛を育てる喜びを失ったのかもしれません。

家族の復権を目指して

今、若者たちに求められるのは、新しい「幸福感」です。8割以上の独身男女がいずれ結婚してみたいと答えながら、一方では、「結婚は個人の自由であるから、結婚してもしなくてもどちらでもよい」(内閣府調査)の解答が7割を超えます。

揺れているのです。前述のように「結婚しなくても幸せな人生をおくることができる」と6割の女性が答えるように、結婚の向こうに待つ幸福感が見えないのです。純白のウェディングドレスに憧れもしますが、リスクを冒してまで飛びつく商品ではないのです。

でも、子供は育ててみたい…、やはり揺れているのです。

女性は女性にしか与えられていない特性があり、男性には男性に与えられた特性があります。人間は肉体の成長と共に心も変化し成長していきます。成長には必要な環境と栄養が求められます。成長と共に女性の特性、男性の特性が開花します。言葉を換えるなら「品格」ともいえます。男性の品格が「男らしさ」の香りを放ち、女性の品格が「女らしさ」の香りを放ちます。その香りに魅せられて、男女は必然的に寄り添い、求め合い、一緒にいたいと思うようになります。

結婚後の幸福はこの「男らしさ」「女らしさ」の多種多様な妙味が作りだすものです。子供を持った男女の妙味、孫を持った男女の妙味、老いてなお品格の磨きがかかるのです。

若い世代は、愛は「有る」「無い」でとらえがちです。したがって、愛の「無い」結婚は考えられないのです。しかし、結婚したらわかります。愛は「育てる」ものだということを。「有る」「無い」の視点よりも、もっと大切な視点は生涯をかけて愛を「育てる」という考え方です。目の前にいる異性はその大切なパートナーなのです。「男らしさ、女らしさ」はそのためのスパイスです。その喜びを人生の先輩が大いに語り、見せてあげなければならないのでしょう。家族の復権を目指して、まず我が家から…。

※ 告る:「告白する」を略したもので、意味も同じの若者言葉