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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

もぎたてのキュウリは味噌をつけ丸かじりで

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白い大皿に盛った深緑色が鮮やかな10本ほどのキュウリを見て驚いた。それを家内が1回で収穫してきたのだ。手に取ると、瑞々(みずみず)しい果皮のイガイガがチクリとする、もぎたてほやほや。そのまま味噌をつけて丸かじりするのが一番うまい。

私の住む東京郊外の、ささやかな市民農園での、素人野菜作りのことは昨年6月号の小欄などで書いてきたが、今年はその3年目(来年2月に明け渡し)。”せめてわが家で食べる野菜ぐらいはここで”と抽選を当てた家内が張り切った矢先に、脊椎腰部を圧迫骨折してしまった

仕方なく私が早起きし仕事前に野菜作りをするはめになったが、やっつけ仕事にならざるを得ない。上手くできたのは手がかからず誰がやっても育つ春菊とミニトマト、それに昨年の猛暑をものともしない生命力で育ち、採りきれないくらいの実をつけたゴーヤぐらいだった。

夏野菜を代表するキュウリは難しい。10本も採れなかった1年目の不作。昨年はやめるつもりが、隣から苗をもらったので少しだけ植えた。結果はやはり芳しくなかった。

そのあと冬を前に、隣の畑は休みの日におばさん一家総出で、畝(うね)を蒲鉾(かまぼこ)形にビニールで覆い、その中でほうれん草や水菜、サニーレタスなど葉物野菜を作っていた。そのおばさんが何もしない私の畑を見て、ここでも作らせてほしいと言うので、これは渡りに舟と一も二もなく承諾。私の畑にも蒲鉾ができ、正月をはさむ冬の間も葉物野菜や大根に結構恵まれたという次第。今夏になっても、それがそのまま続いて蒲鉾のなくなった畑は緑があふれている。

私が直にやっているのはささやかな畑の、ほんの一角に種をまいた春菊だけになったが、おばさんのお陰で畑は次々に実をつけるキュウリに続いて、ミニや中玉トマトにゴーヤ、里芋などが日に日に育ち、楽しみを膨らませてくれる。畑までの散歩と収穫は、3年目にしてようやく畑と関われるようになった家内にとって最良のリハビリである。

各地で山開きとなる7月は七夕の7日が二十四節気の小暑、23日が1年で最も暑い時期とされる大暑だが、蛍狩りの時でも。大暑から5日間ほどを中国では「腐草為蛍(腐草が蒸れて蛍になる)」として、蛍のほのかな光に涼を求めたという。

淋しさや一尺消えて行く蛍  立花北枝(ほくし)

蛍(ほうたる)に暮れねばならぬ空のあり  稲畑汀子(いなはたていこ)