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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

日比谷公園の冬・郷土の森の深緑の中で張り合う”紅一点”の花に

街やプラザを彩るクリスマスツリーが話題となる師走(しわす)・12月を迎えると、身も心も冬という寒い季節を実感するようになる。年の締めくくりの月は、今は寺で仏名会(ぶつみょうえ)が営まれ名残(なごり)となっているが、平安時代の昔はこの法会が各家で行われていたとある。

1年の間に知らずして犯した罪障を懺悔(ざんげ)し、その消滅の祈願のために僧侶を迎えて行っていた。このため12月は、師があちこち走り回ることから師走(しはし)り月が師走になったとされている。

今年の冬入りを告げる二十四節気の「立冬」11月8日に、都心の日比谷公園を散歩した。国会議事堂に近い方にある公園入り口の一角に、円形噴水のある「かもめの広場と郷土の森」がある。この郷土の森は、昭和59年(1984年)の第2回全国都市緑化フェアの開催を記念して植樹された全国47の都道府県の木などが並ぶから、各県の樹木名を知り親しむのにいい。

植樹から27年ほどになる各県の木は、宮崎県のフェニックスのように見上げると大きな傘を開いたように葉を大きく広げたものもあるが、たいていは大人の背丈の倍ぐらいの高さで、幹も葉もちょうどよく観察できる。ここの、かえで(山梨県)、はなのき(愛知県)、もみじ(広島県、滋賀県)、いちょう(東京都、大阪府、神奈川県などなどが、そろそろ紅(黄)葉を始めているのではないか、との期待が少しあった。

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しかし、夏の猛暑の上に、秋も例年より気温が高めだった今年の都心は、冬もまだまだ先の感じで樹木の葉は緑をしっかり保っていた。期待はかなわなかったが、代わりに”紅一点”とはよく言ったものだと言葉を実感した収穫もあった。県の木ではないが、深緑の葉の間から、咲き始めたばかりの紅い花やつぼみをのぞかせた、さざんか(横浜市、神戸市)を見つけたからだ。私達の年代には懐かしい童謡「たきび」(巽聖歌作詩、渡辺茂作曲)を、つい口ずさんでいた。

♪さざんか さざんか さいたみち/たきびだ たきびだ おちばたき/「あたろうか」「あたろうよ」/しもやけ おててが もうかゆい(2番)

12月に入れば、ここも例年より少し遅れて全国の紅(黄)葉を象徴的に楽しませてくれるだろう。さざんかに続いて、ゆきつばき(新潟県)やつばき(川崎市)の花も、深緑の葉と張り合って冬の美と元気を主張していることだろう。