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愛の知恵袋 53

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

日本人であることに誇りをもって

昨年の東日本大震災では、想像を絶する津波の衝撃と共に、被災者が極限状態の中でも冷静さを保ち、秩序を守り助け合う姿が、世界の人々に大きな感銘を与え、少なからぬ称賛をいただきました。我々が気付かなかった日本人の長所を、外国の人たちから知らされたのです。

"自国民であることの誇り"を持てなかった日本人

国連調査によれば、日本は国民一人あたりの資産では「世界で最も豊かな国」であり、また、英国エコノミスト誌による「平和度指数」調査では、日本は121カ国中、第5位の「平和な国」として評価されました。

にもかかわらず、18歳以上の男女を対象に実施した「世界価値観調査」の結果は意外な事実を明らかにしました。「あなたは自国民であることに誇りを感じますか」という質問に対して、「非常に感じる」、「かなり感じる」と答えた人は、日本は54.2%で世界60か国中57位でした。日本以下の3か国(リトアニア、エストニア、ルクセンブルク)は、いずれも自国民以外の比率が多い国であるため、実質的には最下位でした。

ちなみに、「もし、戦争が起こったら国のために戦いますか」という質問に対して、「はい」と答えたのは15.6%。これも他の国々に比べて極端に少なく、調査対象35か国中、最下位でした。

いまだに日本人は敗戦国としてのトラウマから立ち直れず萎縮(いしゅく)しているのだという人もいれば、戦後の教育界とメディアの偏向がもたらした弊害であるという意見もあります。いずれにせよ、健全な国民意識とは言えない状態にあることには間違いありません。

外国人から見た、日本人の姿

台湾出身で日本に長く滞在している評論家、黄文雄氏は、その著書『日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか』の中で、「今こそ日本人は、自信を取り戻すべきである」と訴えています。

まず、戦国時代の1549年に来日したフランシスコ・ザビエルは、イエズス会への報告書に「日本人はこれまでに発見された他のどこの国民よりも、徳行と廉直(れんちょく)(※1)の点で優れている。その性質は温和で、瞞着(まんちゃく)(※2)を排し名誉を切望し、名誉こそ最高のものであるとしている。貧困は彼らの間では普通のことで、苦労して貧困に耐えるけれども、それは決して不名誉のこととはしない」と書き送っています。そして、「日本人たちは好奇心が強く、知識欲が旺盛で、質問は限りがありません」と言っています。

また、江戸中期の1775年に来日したスウェーデンの医師・植物学者のカール・ツュンベリーは、「正直と忠実は、国中に見られる。そしてこの国ほど盗みの少ない国はほとんどないであろう」と言い、日本人の国民性をこう述べています。「賢明にして思慮深く、自由であり、従順にして礼儀正しく、好奇心に富み、勤勉で器用、節約家にして酒は飲まず、清潔好き、善良で友情に厚く、率直にして公正、正直にして誠実、疑い深く、迷信深く、高慢であるが寛容であり、悪に容赦なく、勇敢にして不屈である」。

さらに、明治35年以来何度も来日したイギリス生まれの写真家、ハーバート・ジョージ・ポンティアは、日本の女性の素晴らしさを伝えています。「日本の婦人は賢く、強く、自立心があり、しかも優しく、あわれみ深く、親切で、言いかえれば、寛容と優しさと慈悲心を備えた救いの女神そのものである」。

そして、黄文雄氏はこう書いています。「近年の日本は、”世界で最も住みたい国”のランキングでは、常にカナダとトップを争っている。…(中略)…上海女性の結婚相手に関する調査では、国際結婚したい外国人としては第1位が日本人(39.6%)で、第2位のアメリカ人(9.1%)を大きく引き離している。イギリスのBBCが2005年から世界34か国を対象に行った”世界への貢献度調査”では、日本は3年連続でトップである。日本人は、自分たちが世界から高い評価を受けていることをほとんど知らない。そのことは、私を含めて外国人が非常に不思議に思うことである」。

人を愛し、国を愛し、世界を愛する生き方

「私とは誰か」という自己のアイデンティティーが明確でないと、人は自分に誇りが持てず、何をするにも自信がなく、力を存分に発揮できません。

第二の敗戦とさえ言われる東日本大震災からの復興は、経済的再生だけではなく、私達日本人に天が与えた有史以来の優れた特性を再発見し、日本人としての自信と誇りを取り戻す機会にすべきだと思います。

21世紀という新しい時代に生きる私たちは、自分の仕事に誇りを持ち、自分の家族を愛し、自分の町を愛し、自分の国を愛しながら、かつ、世界と人類のために貢献できる”世界人”になっていきたいものです。

最後に、もう一人の言葉を伝えましょう。フランスの劇作家・詩人であり、駐日フランス大使として日仏の文化と経済の交流に尽力したポール・クローデルは、1943年秋、パリの夜会でこうスピーチをしました。日本が彼ら連合国を敵として戦っていた太平洋戦争末期のことです。

「私がどうしても滅びてほしくない一つの民族がある。それは日本人だ。……彼らは貧しい。しかし、高貴である」


※1廉直=清くまっすぐなこと ※2瞞着=あざむくこと