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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

花火の束の間の美から、心の火をともし、
慰められたり、立ち上がる力を得たり、涼を感じたりする日本人

夜空にパーッと火花の光の大輪が華咲いたあとにドーンと耳と腹に轟(とどろ)く大太鼓音—日本の8月は、夏の風物詩・花火の季節。昨年は東日本大震災による自粛ムードなどの影響で、春の花見と同様に首都圏の花火大会は約7割が開催を見送った。

そんな中で、被災地では、あえて例年通り花火大会を開催したところもあった。花火のひとときの光が疲弊した人々の心に明日への力を与え、犠牲となった人々への手向けの花に、との願いが込められたのである。

例年通り一万発を打ち上げた「ふくしま花火大会」は8月7日開催だった。原発事故の風評被害に立ち向かう中、合言葉「がんばろう!ふくしま」が追悼と復興をアピールした。4日後、大震災から5か月を迎えた11日には、岩手・宮古市田老地区をはじめ岩手、宮城、福島三県の太平洋沿岸部など10か所の被災地て、犠牲者を追悼・鎮魂し復興を願う花火が打ち上げられた。花火大会の統一テーマは「ライトアップニッポン」である。

多くが中止となった首都圏でも、通常よりも1か月遅れとなったが開催に踏み切った花火大会もある。「両国の花火」として「たまやー」「かぎやー」の掛け声の由来を持つ隅田川花火大会が開かれたのは8月27日だった(今年は7月28日開催)。そもそもこの花火大会は、八代将軍吉宗が大飢饉とコレラ犠牲者を弔ったことに始まる歴史がある。昨年は東日本大震災の犠牲者追悼と被災地復興への祈りを込めた開催となり、観覧席に招かれた都内避難所で生活する被災者ら約500人が夜空を彩る光の競演に、しばし時間を忘れるほどに明日への活力を得たという。

花火

日本の花火大会は近年、著名ファッションデザイナーらのデザインした花火の影響で一層多彩になり、”火の芸術”の深化がさらに進んでいる。華麗にパッと輝き、バッと消える束の間の芸術。日本人はその束の間の美から、心の火をともし、慰められたり、立ち上がる力を得たり、涼を感じたりする。外国では、花火は五輪開会式などのビッグイベントを盛り上げる引き立て役として登場する。例えば、今年の米国の独立記念日(7月4日)を祝うニューヨークの花火打ち上げの写真(花火と夜空に浮かび上がる摩天楼)が新聞に掲載されたように。しかし、日本では花火が主役となる。花火だけを楽しむ、あるいは芸術品を鑑賞するように”火の芸術”として夜空を仰ぎ見るために多数が出かける花火大会というものは、外国にはないと言うのである。

もっとも、私が花火大会で思い浮かべるのは、子供の時分とあまり変わらない。もっぱら”花よりだんご”の口で、かき氷やアイスキャンデー、スイカなどの楽しみ。そろそろ歳相応に大人の花火見物人に脱皮・成長しなければ、と思いながら、腹の方が鳴るのである。

〈ねむりても旅の花火の胸にひらく〉 大野林火