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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

秋風に揺れるコスモス頭上の夜空、美しい月を愛でる十五夜と十三夜の風雅

「秋たつやほろりと落ちし蝉の殻」(正岡子規)

3年続きの猛暑となった夏から秋が立って1か月になろうとするが、立秋(先月7日)後の残暑もなお厳しい。暑さがおさまるとされる二十四節気の「処暑(しょしょ)」は先月23日で、今月7日は「白露(はくろ)」、22日は秋分である。

白露は、野草に宿るしらつゆなどに秋の気配をひとしお感じさせられる、と解説される。庭の葉にあふれる露に見る秋の風情を清少納言は「前栽(せんさい)のつゆこぼるばかりぬれかかりたるも、いとをかし」(枕草子)と楽しんでいる。暑さ寒さも彼岸まで、というように、夏から秋へバトンは移りつつあり、5月とともに風の爽やかな、1年で一番過ごしやすい季節を迎えようとしている。

吾亦紅(われもこう)の暗赤色、桔梗(ききょう)の青、コスモスのピンク、女郎花(おみなえし)の黄色、曼珠沙華(彼岸花)の真紅----。花の色は強い原色なのに、秋の花は完成し成長が終わったものが宿す落ち着きと涼やかさの一方でどこか寂しげな陰を見せる。明るさと成長のエネルギー、未熟さの中にも命の息吹を感じさせるものの、どこか頼りなげな春の花とは違う。

秋の花は大人というか玄人(くろうと)向き、春の花は大人も子供も万人向きと言えばいいのだろうか。山上憶良は、万葉集で「萩の花/尾花(をばな)葛(くず)花/なでしこの花/女郎花(をみなべし)/また藤袴(ふじばかま)/朝貌(あさがほ)(=桔梗)の花」と詠み、秋の七草の季節を愛でたのである。

コスモスは秋を代表する花の一つで秋桜の和名でも親しまれるが、高浜虚子にコスモスを詠んだ句がある。〈コスモスの花あそびをる虚空かな〉

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快い秋風に揺れるコスモス。その頭上に天高く澄んだ空気の広がる秋の夜空に、太陽と入れ替わってぽっかり浮かぶ月が美しく見えるのも九月である。その月を愛(め)でて、ススキを飾り団子を供え秋の収穫に感謝するのが月見の行事である。

夜空の美しい月を愛でる風雅な中秋の名月は、旧暦8月15日夜の月で、ほかに芋名月、満月、十五夜、望月(もちづき)、望(ぼう)などの呼び名もある。今年は今月30日(日)になる。月見の習慣は中国伝来だが、 十五夜だけ見るのは「片月見」といわれ縁起が悪いとして約1か月後の旧暦9月13日(今年は10月27日)にもう一回する月見が十三夜。月見を両日行うようにしたのは、いかにも日本らしく、独自の習慣として続いてきたのである。