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親育て子育て(1)

ジャーナリスト 石田 香

いじめはなぜ起こるのか

子どもが社会生活をしながら成長していく中で、いじめはストレスが原因で起こるもの

いじめが半年で14万件も

大津市で2011年10月、いじめを受けていた市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺した事件が昨年、大きな社会問題になったのを受け、文部科学省は緊急のいじめ調査を行いました。全国の小中学校と特別支援学校で、昨年4月から9月までの半年で把握したいじめは14万件を超え、前年比の約4倍にも上りました。文科省は「学校側が軽微な事案も報告したため」としていますが、逆に、これまでは学校のいじめに対する感度が鈍過ぎた、とも言えます。

学校におけるいじめ調査が始まったのは1985年度で、全国で約15万件のいじめが報告されました。東京都中野区の中野富士見中学校で中学2年の男子が「葬式ごっこ」をされて自殺したのは86年で、社会的に「いじめ撲滅」の機運が高まったことから、同年度にはいじめが激減しています。

1994年に愛知県西尾市の中学2年の男子が、「いじめられてお金をとられた」という遺書を残して自殺したのがきっかけで、当時の文部省はいじめの定義を見直し、「事実を確認されているもの」から、「いじめられた子供の立場から見る」に変えました。

今回の調査で、「生命または身体の安全が脅かされるような」重大事案は278件で、次のような事例が報告されています。小学生男子「持ち物を壊された上にばかにされたり、暴力を受けたりするようになったため、自殺をほのめかした」、中学生女子「持ち物にいたずらをされるなどのいじめを受けたが加害者が分からず、ストレスから突発性の難聴を発症した」、中学生男子「加害生徒から友人とのけんかを強要され、断ると暴行を受けるため、けんかをしてけがをし入院した」、高校生女子「いじめを受けて死にたいと養護 教員に打ち明けたが、いじめの事実はなく、友人との擦れ違いが原因だった。中学時代にいじめで不登校しており、その記憶から友人との関係をうまく築けない」などです。

いじめの認識、対応はいじめられた子供の立場に立って考え、行動することが基本です。また、発達段階における問題行動の一つとして、いじめの発生をとらえることも必要です。そこで、本連載をいじめをめぐる子供たちの問題を探ることから始めたいと思います。

原因は子どものストレス

いじめは、非行や校内暴力、不登校などと一連のもので、非常な緊張感とストレスを抱えた子供たちが、その発散として起こすものです。エネルギーのある子は問題行動を起こし、逆にエネルギーのない子は学校に行けなくなります。

いじめとけんかを比べると、けんかは単発的で、時間的、空間的な広がりが少なく、むしろけんかすることですっきりしたり、仲良くなったりもします。それに対して、いじめは継続し、クラスに拡大し、子供たちのやさしさや思いやりが封じ込められ、人を嫌ったり、無視したりする気持ちが増大してきます。

いじめについて、文科省は次のように定義しています。「①強い者が弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じているもの」で、これが1か月を超えて続いているといじめと判断されます。さらに「個々の行為がいじめに当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うことに留意する」と付け加えています。

この基準で見れば明らかにいじめなのに、校長や教育委員会が「いじめがあるとは知らなかった」という言い方をするのは、責任逃れだと言われても仕方がありません。彼らがいじめを認め、報告しようとしないのは、いじめが起きたことで自分たちの評価が落ち、昇給や人事に影響すると心配するからなのです。残念ながら、学校も教育委員会も子供を第一に考えていないのが実態です。

子供は兄弟や友達と一緒に遊んだり、行動したりしながら、失敗しては学び、少しずつ成長していくものです。ところが今の学校では、すぐに結果を求める傾向があります。学力をはじめいろいろな目標が達成できたか、時間や規則を守れるか、教師の言うことを静かに聞けるか、提出物を忘れないかなどです。中学以上になると、多くの学校では校則で服装や髪形などが細かく決められています。

これは効率優先の社会の反映で、残念ながら家庭もその影響を受けて、子供の成長を見守るよりも、目標達成を急がせる保護者が多いのも現実です。こうしたことから、今の子供たちは、親たちの子供時代よりも、大きなストレスを抱えています。そんな子供の状況を理解した上で、いじめなどに対応することが大切だと言えるでしょう。