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愛の知恵袋 62

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

旧暦活用で心豊かに暮らそう

見直される旧暦の良さ

最近日本では、「旧暦を活用して、自然とマッチした生活をしよう!」という静かなブームが起こっています。

日本人は、「明治5年12月3日をもって、明治6年1月1日とする」という太政官布告(だじょうかんふこく)が出るまで、1200年もの長い間、旧暦で暮らしてきました。旧暦は、元々は中国で4千年前から「農暦」として発達したものが、6世紀半ばに日本に伝来したものです。その後、幾度かの改変を経て、江戸末期の1844年に編纂された「天保暦(てんぽうれき)」は、日本の自然と気象に見事にマッチした世界でも屈指の科学的な太陰太陽暦です。

「旧暦」とは何か

現在、世界で広く使われている暦には、3種類あります。「太陰暦」「太陽暦」「太陰太陽暦」の3つです。

「太陰暦」は「月ごよみ」です。月が地球を1周するのに29.53日かかりますが、その12か月分(約354日)を1年とし、端数の調整のために1か月が29日の「小の月」と、30日の「大の月」があります。世界中のイスラム教徒は、この「月ごよみ」を基準として生活しています。

「太陽暦」は、地球が太陽を1周する約365日を1年とする暦です。私たちが現在使っている世界標準暦は、4年に1度、2月を29日間にする「閏年(うるうどし)」を定めて誤差を調整する「グレゴリオ暦」です。カトリックはじめ大半のキリスト教徒がこれを用いています。

「太陰太陽暦」は、月と太陽の運行を両方取り入れた暦です。この暦では、月と太陽の1年の差(11日)を2〜3年に1回(正確には19年に7回)、「閏月」として1か月を加えて1年を13か月にして調整しています。私たち日本人が「旧暦」「陰暦」と呼んでいるのは、この「太陰太陽暦」のことです。ちなみに、ユダヤ教徒の使うユダヤ暦も太陰太陽暦です。

なぜ、旧暦が大自然の動きに合うのか

地球は潮の干満をはじめ、四季の変遷や気象全般に至るまで、太陽と月の運行に大きく左右されます。その結果、人間をはじめ、地球上の全ての動物・植物は、生理的にも強い影響を受けて生きています。

特に、地球を周回する月は、動物や植物の生態に大きな影響を与えていますから、太陽暦だけでは、自然界の細やかな営みは把握できません。そこで、太陰太陽暦が、最も緻密に自然の営みを予測できる暦になるのです。

現在でも、農業、漁業に携わる人達は、旧暦のこよみを手放せませんし、ヨガや助産や整体などにかかわる人にも必要な知識です。また、その年の季節変化を事前に予測して対応しなければならないアパレル業界や、マリンスポーツ、ウインタースポーツ等にかかわる業種の人たちにとっても必要なものになっています。

季節感豊かに楽しく暮らそう

明治5年の改暦の布告から、官公庁の業務やビジネスは西暦(太陽暦)カレンダーで進められるようになりましたが、庶民の日常生活では、正月を旧暦で祝う習慣が残っていました。しかし、第2次大戦後は「新正月で統一を…」ということになり、季節感の伴わない「新春のお祝い」をすることになりました。松竹梅といっても、まだ梅の花がありません。

五節句も、七草粥に七草は無く、ひな祭りに桃の花は無く、端午の節句の菖蒲湯は何とかなるが、七夕祭りも曇天が多くて天の川が見えず、重陽(ちょうよう)の節句には菊の花が無い…。そこで業者がハウス栽培で作ったものを出荷する…という何とも味気ないものです。しかし、韓国・中国・台湾・ベトナムをはじめ、アジアのほとんどの地域では、今でも正月などの年中行事は 旧暦で行っています。

「歳時記カレンダー」活用のすすめ

普通のカレンダーでも、「今日は旧暦の何月何日」ということは分かりますが、それだけでは季節感までは味わえません。

本誌に連載されている堀本氏の『春夏秋冬つれづれノート』をじっくり読むだけでも、季節感がだいぶ伝わってきます。もっと関心のある方は、ぜひ、「歳時記カレンダー」か、または「旧暦カレンダー」を手元に置くことをお勧めします。

そこには、「冬至」「大寒」「立春」などの二十四節気をはじめ、七十二候、月齢、潮名、六曜(ろくよう)、干支などが載っていて、今がどんな季節で、旬の食べ物や草花は何か、また、祭礼などの年中行事も事前にわかります。

特に、「歳時記カレンダー」では、自然の花鳥風月の楽しみ方が分かり、俳句、短歌、書道、茶道、華道、絵手紙などを楽しみたい人にはお勧めです。

私は釣りが好きですが、月齢を見て新月や満月の頃に行くようにしてからは、釣果が良くなりました。「大潮」の時は、魚の動きが活発で食いが良いのです。

旧暦を活用すると、自然との一体感がグッと深まり、身近な所で感動が増えます。そうすれば、今まで以上に、情緒豊かに暮らすことができるでしょう。