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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

つい歌を口ずさみたくなり、元気づけられる5月の爽やかな緑の風を受けて

新緑が野山で萌え、爽やかな風、青い空に、寒からず暑からずの5月は、野外活動やハイキングなどに絶好の季節を迎える。人前ではまず歌わない私も、ひとりだとつい口ずさんでいたりするほど、軽やかな気持ちになる。

たいていは小さい頃、よく聞いたり歌ったりした唱歌や童謡だが、「緑のそよ風」(詩・清水かつら、作曲・草川信)もそんなひとつ。♪みどりのそよ風 いい日だね/蝶々(ちょうちょ)もひらひら 豆の花/七色畑(なないろばたけ)に……の歌詞を懐かしく思い出す同輩も少なくなかろう。

資料では、私の生まれた年と同じ昭和23年発表の童謡。NHKラジオで放送され、多くの人々に愛されてきたというから、私もラジオで何回も聞いたのであろう。風に色があるわけではないとすると、「緑のそよ風」はどんな風なのか。たぶん、初夏のあらゆる草木の緑が最も美しく映えるころに吹く爽やかな風の気持ち良さに、人前では歌わない私までも口ずさませてしまう魔法の風なのであろう。

5月は二十四節気で夏の気配を告げる5日の立夏(りっか)と、草木や花、鳥や虫などが日を浴びて次第に成長して生き生きとしてくる21日の小満(しょうまん)がある。立夏の5日は端午の節句でもある。鯉のぼりを掲げて「子供の日」を祝うのは、滝登りで龍になるという鯉の逸話に因(ちな)んで男の子の立身出世の願いを託す武家の風習からくる。

鯉のぼり

この時期、童謡の「こいのぼり」(昭和6年、作詞・近藤宮子)も口ずさみたくなるが、ビルに囲まれた都会では、♪屋根より高いこいのぼり……と歌いだす通り5月の風に乗ったこいのぼりが大空を泳ぐ風景はなかなか見られなくなった。それでも「こいのぼり」は、いつまでも子供たちに歌い継がれていってもらいたい歌である。〈♪おおきいまごいは おとうさん ちいさいひごいは こどもたち〉と続く歌詞が、明るく元気に過ごす〝ほのぼの家族〟を表しているからである。

鯉のぼりの歌にはもう一つ、大正2年発表の文部唱歌があることも思い出した。弘田龍太郎作曲の「鯉のぼり」は、♪甍(いらか)の波と雲の波 重なる波の中空(なかぞら)を 橘(たちばな)かおる朝風に 高く泳ぐや鯉のぼり……。

朗々とした格調高い文語調の詞もいい。鯉のぼりが屋根瓦と雲の波の間を、5月の爽やかな風に乗って悠然とかつ力強く泳ぎ、躍る様が思い浮かんでくるではないか。

心よき青葉の風や旅姿 正岡子規