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福祉のこころ(7)

施設経営者 金田 文孝

仕事が即「為に生きる」実践の場

私は小規模の有料老人ホーム4か所を運営しています。入所者数70名、関係する職員は40名以上。2008年の立ち上げから続けています。その体験から、福祉が事業として社会的基盤となるための前提条件を挙げてみます。

  1. 事業として成り立つためには、初期投資の資金が必要です。また、毎月資金を回し、収支を合わせていく苦労があります。
  2. 社会的弱者の高齢者や障害者を受け入れ、生命を預っていますので、社会的責任が大きく、気苦労が多いです。
  3. 行政の指導や監督がことのほか強く、精神的負担が大きいです。ざっと挙げても、高齢者住まい法、介護保険法、老人福祉法、消防法、食品衛生法、感染症法など、10の法律と関わり、それぞれ縦割りの所轄官庁(厚生労働省、国土交通省、総務省、内閣府、法務省など)から監督される立場にあります。それぞれに、届出・認可・変更・更新・指導・監査など、多くの煩雑な手続きがあります。
  4. 多くの専門家や機関と緊密に関わりを持ちながら、初めて成り立つ仕事です。高齢者、家族、ヘルパー、ケアマネ、包括支援センター、各行政機関、看護師、医師、歯科医師、介護保険、健康保険などと、バランス感覚や調整力、決断力を駆使して関わりながら、責任が問われる仕事です。

福祉や介護の仕事は、以上のようなことが前提となって初めて成り立つ仕事だと感じます。

これまでに、生命を扱う責任の大きさに気が重くなって、眠れなかったことも多く、また自分の能力の限界を感じる時も何度かありました。しかし、何よりも入所者ご本人の笑顔や家族からの感謝の言葉などに支えられて、やれてきているというのが実感です。

「人生は一度きり。後悔しないような人生を歩みたい。70歳過ぎて、ああすればよかった、こうすればよかった、という悔いは残したくない。やれるだけのことは全てやりつくした」と言える人生でありたいと思います。

「人生どの道、苦労はつきもの。リスク(危険性)は必ず伴うものです。為に生きる分だけ責任が大きく、それに比例してリスクも大きい。故にこの仕事は、やりがいのある仕事」と、内心で受け止めています。全てを受け入れて、感謝していく姿勢がなければ、やれない仕事だ、と感じています。

社会の構成員の4分の1が高齢者や障害者であり、この方々は、誰かの支えがないと一人では生きることができません。それ故「為に生きる」ことを受け入れて、支える側の者が必要ではないか、と思うのです。

社会は、こうした社会的弱者と言われる人たちもいて成り立っています。その意味は、周りの人たちが、その方の為に生きて、その方から教えられることもあり、お互いが助け合って生きて、愛の人格を高めるために与えられた宿題なのだ、と感じます。肌に触れたり下の世話をしながら至近距離で、1対1で向き合い関わる仕事です。

そういう意味で、福祉や介護は「為に生きる」ことを訓練されてきた人にとっては、その真価を発揮できる最善の場です。

人の尊厳性を重視し、日常生活の自立や精神的・人格的自立への支援など、福祉や介護の仕事は、即「為に生きる」行為の実践になっていて、仕事を通して人間性の成長になると確信しています。そういう仕事を、同じ価値観を持って共に手を取り合ってやれるならば、この社会や世界を、よりよいものにできると信じて今日も歩んでいます。