機関誌画像

愛の知恵袋 66

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

晩婚主義から、適婚主義へ

「結婚は先送り」の風潮に警鐘

スケートの浅田真央さんが、オリンピック後の引退を示唆した時、やめたら何をしたいのかと問われて、「いい人を見つけて、結婚をしたいです」と答えたことに、「若すぎる!」「平凡すぎる!」と惜しむ声が上がりましたが、私はこれを聞いて「真央ちゃんはえらい!」と思いました。

なぜかというと、様々な方の相談を受ける中で、最近、どうしても気になることがあったからです。それは、若い人達の結婚意識の問題です。

特に、心配なのは女性のキャリア志向による晩婚化です。女性の平均初婚年齢は、戦後しばらくは23歳でした。それが、1977年に25歳になり、2000年には27歳、2010年には、28.8歳になりました。男性は30.5歳です。いわゆる「超晩婚化」です。

当然のことながら、晩婚化は、晩産化につながります。第一子出生時の母親平均年令は、2011年にはついに、30.1歳になりました。

晩婚カップルと不妊治療の実情

晩婚の場合、思うように妊娠ができない人も増えてきます。

そのような夫婦に希望を与えてくれたのが、体外受精や顕微授精などの不妊治療です。厚生労働省では、2004年から、不妊治療に公費助成を始め、1回最高15万円までの支援を受けることができるようになりました。

最近は、不妊治療を受ける人が年々増加しています。国立成育医療センターの斉藤英和医長によれば、体外受精の件数も、年に2〜3万件ずつ増えており、2007年に16万件であったものが、2010年には24万件に急増しています。そのうち、40歳以上の母親が占める割合は36%です。

ただ、体外受精も万能ではありません。妊娠できる人は、35歳以下でも2割くらいですが、40歳ではわずか8%になります。

高齢出産にともなうリスク

すでによく知られているように、高齢の妊娠・出産には、多くの点でリスクが伴います。

例えば、せっかく妊娠できても流産する率が高いことです。31歳以下の女性であれば、流産率は16〜18%ですが、40歳で35%、42歳では47%になります。

また、40歳以上の妊婦は、妊娠高血圧症候群や、ダウン症をはじめ、胎児の染色体異常の確率が相当高くなると言われています。

京都大学大学院教授で、不妊治療専門の菅沼信彦医師は、「高齢妊娠・出産自体がリスクを伴うものであり、いわば自然に反した行為であるということを認識しなければなりません。40歳を超えてから初めて子供を産むという動物は、人間以外には存在しないのですから」と言っています。

本人が元気でも、卵子は老化している

なぜそうなるのか…という疑問に対して、初めは、年齢と共に夫も妻も身体機能が総合的に低下するから…と考えられていましたが、その後の研究で決定的とも言うべき原因が分かりました。それは、女性の卵子は、生理の周期に合わせて新しく作られているのではなく、その女性が胎児の段階で、一生分の卵子がまとめて作り置きされたものであるので、「加齢と共に確実に老化している」ということです。

そのため、女性の体力や容貌の若さとは関係なく、卵子細胞が古くなり、「正常に分裂する力」が衰えてくることによって、染色体異常を起こすリスクが大きくなるというのです。

若いうちに結婚し、安全な出産をしよう

ここまでお話しすれば、私が何を言いたいのかは、おわかりのことと思います。カウンセリングをする中で、「もっと若いうちに結婚していれば…」、「もっと早くに出産しておけば…」という後悔に直面するご夫婦が、たくさんおられるのです。

もちろん、やむを得ない事情で婚期が遅れたり、妊娠が遅れたりする方々もおられるので、そのようなご夫婦には、何とか無事にお子さんを授かれるよう祈りたい気持ちです。

ともあれ、10代、20代の人たちに私がお願いしたいことは、「若いうちは仕事も遊びも存分にやりたいことをやり尽くして、それから結婚を考える」という「晩婚・晩産」主義の生き方ではなく、「適齢期に結婚して適切な年齢で出産し、子育てが一段落したらまたやりたい仕事や夢を追う」という「適婚・適産」主義を選んでいただきたいということです。

これは女性だけでなく、男性の側にも責任があります。女性の高齢妊娠や出産の深刻さを理解できていないため、長く付き合っているのに、なかなか結婚の決断をしないとか、結婚しても妊娠を先延ばしにしたがる男性が少なくないからです。