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親育て子育て(10)

ジャーナリスト 石田 香

図鑑で科学の知識を深める

生き物に興味を持ったら図鑑で調べ、好きなことを深めていく

好きなことを自分で調べる

子供は科学物も大好きで、生き物が好きな子供が図鑑を読むようになると、どんどん科学的な知識が増えていきます。

私の息子は小さいころからヘビやカエルが好きで、保育園の時に家でオスのヒョウモントカゲモドキを一匹飼い始めたことから、爬虫類の図鑑を読むようになりました。すると、だんだん詳しくなって、メスのトカゲも飼い始め、卵を産ませることができました。残念ながら、ふ化には成功しなかったのですが、興味を持ったことを図鑑で調べるというスタイルができたように思います。

図鑑を読むうちに、ヘビも飼いたいと言いだして、爬虫類のお店と相談し、一番飼いやすいというミルクスネークを飼うことにしました。住まいはトカゲと同じ大き目の水槽で、みずごけやおがくずを敷いた床の上に、欠けた植木鉢や木で隠れ家を作ってやります。

私はトカゲもヘビも駄目でしたが、だんだん息子に慣らされて、トカゲは何とかかわいく見えるようになっていました。でも、ヘビはいまだに抵抗感が取れません。ヘビの餌はピンクマウスというモルモットの胎児で、冷凍したのをお店から送ってもらいます。それを湯で戻して食べさせるのも、息子の仕事です。

車の助手席に息子を乗せてガソリンスタンドに寄った時、息子の肩にトカゲがいるのを見て、店員が驚いたこともあります。美容室に連れて行った時は、息子が持っているトカゲを見て、女性客の目が点になり、お店から連れて来ないようにと注意されました。

友達づくりにもプラス

トカゲが役に立ったのは、家族の引っ越しに伴い転校した時のことです。小学校2年生になっていた彼は、先生に相談して「ヘビは駄目だけど、トカゲならいい」と言われて、さっそくトカゲを持って登校したのです。

すると、女の子たちも珍しがって触ったり、手に乗せたりして、彼は名前を覚えられる前に「トカゲを飼ってる子」で知られるようになりました。わが家まで見に来る友達もいて、思わぬトカゲの効用を喜んだものです。学校で跳び箱の中にヘビが隠れていたのを見つけ、みんなが怖がっていると呼ばれ、ヘビをつまみ出して家に持ち帰ったりしました。

来客があると、息子は自分のトカゲを紹介したくてうずうずしています。男性や子供の場合はたいてい喜ぶのですが、女性の場合は気味悪がる人が半分くらいいます。トカゲの餌はコオロギやバッタ、クモなど家の周りで調達できるものなので、学校から帰り、トカゲがおなかを空かしていそうだと、網を持って飛び出して行っていました。

図鑑は爬虫類から鳥類へと進み、息子は鳥にも詳しくなりました。ある時、友達から電話があって、傷付いた小鳥が落ちてきたので、見に来てほしいというので、夫と一緒に出掛けたこともあります。何か得意なことができると、そこから知識や友達が広がっていくので、それが息子にとって良かったと思います。

夢を持つきっかけに

ところが小学校6年生になって、突然、学校に通えなくなりました。カウンセリングが専門の別の小学校の校長先生に相談したところ、今はエネルギーが切れた状態だから、エネルギーが回復するまで家で安心させ、好きなことをさせたらいいと言うので、息子が好きな小鳥を飼うことにしました。犬は息子が小学2年生の時、迷い込んできた白い子犬を飼っていたのですが、次第に大きくなると、世話は夫に任せるようになっていました。

次に興味を持ったのはヒヨコで、養鶏場まで行って3羽分けてもらい、段ボールの箱で飼い始めました。これも大きくなると手に負えないので、夫が庭の一画を金網で囲い、飼うようになりました。卵も数個、産んだのですが、やがてどこかに逃げて、猫にでも食べられたのか、姿が見えなくなりました。

そのうち、息子は校長室に登校して、一人で授業を受けられるようになり、中学校に入ってからは、きちんと通学できるように回復しました。息子の様子は、時折、カウンセラーの校長先生に報告していて、「彼は中学校入学と同時に普通に戻ろうとしているから」という予測が当たったので感心したものです。

彼は中学校で友達に誘われて剣道部に入ったのがきっかけで、高校まで剣道漬けの生活を送るようになり、おかげでずいぶんたくましくなりました。ところが、勉強の方はかなりおろそかにして、大学入試の時期になると親を大いに不安にさせました。

息子が言い出したのは「獣医になる」で、担任も驚いてしまったのです。三者面談では、今の学力ではとても無理だから、別の道を選んだらどうかという口ぶりで、夫もそれに同調したのですが、彼は頑として聞きません。

高校3年生の秋から予備校にも通い始めたのですが、もちろん、現実の大学入試はそれほど甘いものではありません。結果的には地元の予備校で二浪し、やっと地方大学の獣医学科に入ることができました。

大学近くのワンルームに引っ越すとき、彼が持って行ったのは「ミルク」と名付けたヘビで、今では一メートル近くになっています。獣医学科の実習ではヘビの解剖もあり、友達に「ミルクちゃん、かわいそうに」とからかわれたそうです。

息子が獣医になるという夢を持ち、周りから不可能だと言われても頑張れたのは、小さいころ読んだ図鑑が一つのきっかけだったと思います。こうした出会いも大切にしたいものです。