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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

時空を超えた未知の世界に私たちを招待する読書週間と古典の日

大フィーバーのうちに先ごろ終わったNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の中で、東京から母親の故郷である東北の海辺の田舎町に転校した能年玲奈(のうねんれな)演ずるヒロインの天野アキと高校で親友となっていく橋本愛演ずる足立ユイとの興味深いやりとりのシーンがあった。それは対照的に描かれた2人の会話の中で、東京に行ったことのないユイが若者の行き交う原宿など東京の繁華街のことを、いつもそこを通っているかのように細々(こまごま)とよどみなく話したところ。その一つ一つが東京で生活していたアキの知らないことばかりで、アキは目を白黒させてユイの顔を見たのである。

都会の生活に疲れたアキは田舎の自然と生活が気に入り、反対にユイは田舎をあとに東京に出たくて仕方がなかった。東京に出て、アイドルになりたいと強い憧れと意思を持っていた。東京とアイドルについての猛烈な関心から、それらの本や情報ガイドを片っ端から隅から隅まで読んでいた。東京に住んだことがなくても、アキが目を白黒させるほど東京に精通しているのである。

短い中のさりげない演技で、シナリオ作者や演出者がどれほど意図したシーンなのか分からないが、読書ということの持つ知の無限の可能性について極めて雄弁に描いたシーンとして大変に興味深かった。

読書

今月3日の文化の日をはさむ2週間、10月27日から今月9日までが読書週間であることは承知していても、今月1日が古典文芸や芸術への国民の親しみを促すための「古典の日」ということはまだよく知られていないかもしれない。何しろ昨年8月の参院本会議で全員一致の賛成で成立し、制定されたばかりのほやほやで、今年が2回目の記念日(祝日ではない)だから。それでも法制化まで、平成20年に京都で開かれた「源氏物語千年紀」記念式典で、制定をめざす宣言をしてから4年かかっている。11月1日になったのは紫式部の日記にある、源氏物語についての初めての言及が寛弘5(1008)年のこの日であることから。 古典に触れる喜びについて読売新聞の看板コラム「編集手帳」(平成21年11月4日付)は「源氏物語で光源氏が老いを語る言葉、〈さかさまに行かぬ年月よ〉には誰もが深くうなずく◆何百年も前の作者と、あるいは作中人物と、時を超えて会話できることが古典に触れる喜びに違いない」と古典に親しむススメを説く。

読書は、時空を超えた未知の世界に私たちを招待するのである。

7日は立冬、22日は小雪。

〈一輪の薔薇の端紅(つまべに)冬となりぬ〉 大谷碧雲居(へきうんきよ)