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福祉のこころ(11)

助産師 吉田 喜美

3世代先まで命の輝きが続くように

私は助産師になって30年余りになります。出産育児支援を、タイ、南米、アメリカ、ドイツなどで行い、今は日本で行っています。

30年以上前になるでしょうか。ある地域のA婦人は、出産後の女性を、まるで母親のようになって、何組も何組もお世話されていました。出産後の方々をご自分の家でお世話されているのです。凄いことだと思いました。

その後、そのAさんの夫が、霊園のお仕事に従事されるようになったと伺いました。まさに、ゆりかごから墓場まで、出産から永遠の世界への旅立ちまで、お世話していらっしゃることになります。このご夫婦は、そのような使命を持ち合わせておられたのでしょうか。忘れることのできない出会いでした。

さて、「トゥルーライフ・サポートセンター(True Life Support Center)」の名前と存在を知ったのは、最近のことでした。私は、ここでいう、「True Life Support」とは、包括的な命の支援であると捉えています。

例えば、女性が妊娠しますと、胎児の心臓が妊娠4か月で動き始めるときには、その胎児の中に次の世代の命の核が作られていきます。妊娠6か月の女子胎児の中の卵子の数は500万個余りもあります。つまり、ひとたび妊娠するということは、自分の孫の代の命の種までつくられますので、妊婦一人の体の中 に、3世代の生命が同居しているということになります。

その命の誕生の可能性に対して、どのような愛情を注ぎ、命を磨いて生きていくのかが、問われていくことになります。

私は、1秒1秒、刻まれていく日々の生活のなかで、「3世代先まで命の輝きが続くように、今を精一杯感謝して生きていきましょう」と、念じながら仕事をしています。

しかし、現代は、核家族、共働き、母子・父子家庭、若年・高齢初産婦など、なかには課題もあり、妊婦の価値観も多様化し、また、多様な民族の方々も日本で出産されるようになりました。柔軟で幅広い観点に立ち、なおかつ未来に続く命を見つめつつ、忍耐と寛容を伴う支援が要求されるようになってきました。

私の職場にも随時6か国以上の妊婦が通っており、年齢差も15歳から45五歳まで30歳の開きがあります。妊婦さんが心を開き、信頼できる人間関係を経験した分、子供たちを優しく育てていけるのではないかと感じています。

前述のAさんご夫妻が、出産から永遠への旅立ちまでを援助し、奉仕してくださったように、誰もが周りの人に愛情を注ぐチャンスがあり、心を共有する場があるでしょう。

今後とも、共に生き、共に栄え、共に真の道徳・倫理を持つことができるような文化づくりを目指して、私は専門職として実践していきたいと思います。

そして、人のために真に生きようとする人間は、True Life supporterの役割を担っているのだと、気づかされました。