機関誌画像

春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

赤やピンクが鮮やかなシクラメンやポインセチアで聖夜を祝い、心静かに大晦日を

〈冬枯のさびしき庭の松ひと木 色かへぬをぞかがみとはせむ〉昭和天皇御製(昭和22年)

早いもので今年もはや師走を迎えた。まさに”光陰矢のごとし”。余すところひと月、この時期になると時間の流れの早さに驚かされる。とくに心身ともに老境を意識することの少なくないこのごろは、である。逆に、若いときは時間の流れを遅く感じてきたように思う。

時計は同じ時間を正確に刻んでいるのに、なぜだろうかと考えたのは入院中のベッドでだった。毎日1時間ほど、病棟の廊下を行ったり来たりウォーキングして体力を維持しようとした。その1時間を時計を見て「もう1時間も経ったのか」とその早さに驚く日もあれば、「まだ1時間にならないのか、ずいぶん歩いたはずだが」と思う日もあった。

時間の過ぎる早さに驚いた日は、体が重くてチンタラチンタラ(そう見えても体は体調と歳相応にしか動かない)歩いた日であり、遅く感じた日は体調がよくて早くずいぶん歩いたなと思う日であった。これだけ歩いたのだから、もう1時間は経っただろうと時計を見ると、まだ10分ほど残っていたりして時間が遅く感じられるのである。

これを歳にあてはめると、前者が一般に老境にある場合であり、後者が若い時分の体が自在に動いたときということになる。

昨年夏のロンドン五輪の記事からも、そのことは言える。サッカー女子の日本(なでしこジャパン)が、準決勝でフランスに2−1で逃げきり、初のメダル(銀以上)を確定した試合のルポ記事である。

「『全然時間が減らない』/日本のゴールを守る福元美穂(岡山湯郷)は、フランスの猛攻を受けながら何度も残り時間を確認した。だが、もどかしいくらいに時計は進まない。後半31分に1点差とされてからは、試合終了ははるか先に思えた」(朝日新聞8月7日夕刊)。なでしこジャパンは1点差に詰め寄られてから老獪(ろうかい)にタラタラとボール回しで時間稼ぎする試合をしたのではなく、全身全霊を傾け若さと力の限りをぶつけた必死の試合をしたからこそ「もどかしいくらいに時計は進まない」と感じたのであろう。

シクラメン

時の流れの中で今年も春夏秋冬つれづれ、7日は大雪(たいせつ)、22日冬至。赤やピンクが鮮やかなクリスマス花シクラメンやポインセチアの聖夜を祝い、心静かに大晦日(おおみそか)を迎えたいもの。

〈クリスマスとは静けさの中にこそ〉稲畑汀子 〈年の瀬を忙しといひつ遊ぶなり〉星野立子 〈父祖の地に闇のしづまる大晦日〉飯田蛇笏