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春夏秋冬つれづれノート

ジャーナリスト 堀本和博

元日にピタリ開花した啓翁桜と葉牡丹との調和であらたかな迎春に

「あーっ、今日は向こうが曇ってるから富士山が見えないね」と先生。「隠れたんだね」と幼稚園児。年長組とひよこ組が手をつなぎペアとなった30組ほどが「あっちによみうりランドがあるんだよ、この前、行ったんだッ」、「スカイツリーが見えるのかな」。園児たちが堤の上のウォーキングコースをワイワイおしゃべりしながら通りすぎて行く。

この冬一番の寒波が列島を覆った先月10日の昼前に、東京・日活撮影所前(調布市)にある多摩川堤の上にいた。ここから川向こうが稲城市(東京都)と川崎市(神奈川県)で、そのずーっと向こうに晴れた日には富士山が眺望できる。年に何回かはダイヤモンド富士も見られる僥倖(ぎょうこう)に恵まれる日もあるという、知る人ぞ知るビューポイントである。

私にとっても、住まいからここまで30分ほどだから絶好のウォーキング折り返し点となるが、ここを知ったのは2か月ほど前のこと。環境運動に精をだしていた奥さんに先立たれた知り合いが、その遺志を継いで花と木を植えるボランティア活動をしている。そのひとつが、ここの堤に隣接する小さな公園広場脇の花壇スペースを維持すること。季節に合わせて花を植え、時々見回って水やりをする。10人ほどの小さな活動だが、前は「ゴミ捨て禁止」看板も効果なくポイ捨てゴミが散乱していた所からゴミが消えた。

今は私も昨冬、お手伝いして植えたパンジーや他の名を知らない紫や紅、白、黄色など色とりどりのスミレの仲間80鉢ほどが、霜柱で盛り上がった土に根づいて鮮やかな色の可憐な花を咲かせている。「これから厳寒を前に植えて大丈夫なの?」と花に無知な私の問いに、知り合いは「スミレは寒さに強いので、冬を越して春までしっかり咲き続けるから、まあ見ていて」と太鼓判を押した。

葉牡丹

そんな因縁で、身を縮める寒さの日にも時々、こちらに足を向けるようになった。花を見守りに行くのだが、霜柱の立つ厳寒にも負けずに健気(けなげ)に咲く花から逆に元気をもらっている。スミレは彼の言葉通り、小寒(先月5日)から大寒(同20日)の冬を乗り越え、春を迎える旧暦の新年元日(同31日)、そして立春(今月4日)と雨水(同19日)を過ぎても咲き続けそうである。

花の話題をもうひとつ。わが家の祭壇では元日にサクラが花を咲かせた。山形で出荷された「啓翁桜(けいおうざくら)」だという。蕾付きの枝を年末に家内がスーパーで買ってきて故郷自慢をひとしきり聞かされたが、元日にピタリ見事に開花。葉牡丹(はぼたん)との組み合わせも絶妙で、あらたかな気持ちで新春・新年を迎えられたのである。

〈山路来て何やらゆかしすみれ草〉 松尾芭蕉