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世界の音楽と家庭 [14]

音楽評論家 吉川 鶴生

音楽を通して平和を築く時代へ

東西半島歌合戦

西のイタリア半島、東の韓半島、この二つの半島で一つの特徴的なことと言えば、歌を歌うことが好きで、しかもうまいということです。半島は一方で大陸と陸続きで、もう一方も海に囲まれているため大陸性と海洋性の二つを併せ持つ国民性で、陸からも海からも攻め入る敵と戦わなければならない運命を抱えていることから、複雑な難しい歴史をたどることが多いようです。それにもかかわらず、どこか器用で、要領よく、遊び上手で、楽天的に振る舞うことのできる特徴があるようです。そんなところから来るのかも知れませんが、音楽的にも生活面においても、表現の豊かさ、芸術的精神が旺盛で、音楽などでは朗々と歌い上げる才を思う存分に発揮しています。

イタリアのオペラ歌手、ルチアーノ・パヴァロッティの圧倒的な声量で「オー・ソレ・ミオ」※1が歌い上げられるのを聴いたりすると、ただ、技術的に大声を張り上げて歌っているのではなく、精神の内にこもる感情を爆発させずにいられないというような心の叫びを感じさせられます。畏れ入るばかりです。ジュゼッペ・ステファノの歌う「帰れソレントへ(邦題)」※2もまた秀逸な歌いぶりであり、とにかく、イタリア歌曲の調べにはしびれるものがあります。ステファノのもう一つの曲「カタリカタリ(邦題)」※3を聴くと、女性に捨てられた男の悲しい歌であることが紛れもなく伝わってきます。その朗々たる歌唱はステファノの名曲と言ってよいでしょう。ギリシアの有名なソプラノ歌手マリア・カラスと恋仲であったことなどから、恋の歌、愛の歌を得意としていたというわけではないでしょうが、ステファノは愛の世界を歌い上げるとき、秀でた表現力を発揮します。

韓半島に根付く歌の魂

東方神起、少女時代など韓国から押し寄せるK-POPの波は、日本だけでなく、世界に広がって、多くの人々を魅了していますが、そもそも韓国という国柄を知るにつけ、分かることは「歌う国なのだなあ」ということです。無形文化遺産となっているパンソリのような伝統芸能もありますが、アリランやトラジなどを歌って生きる庶民の姿の中に、歌うことによって人生の苦しみを払いのけてきた様子が重なります。心の奥底から歌い上げる歌唱力が、韓国の人々にはあります。歌う半島イタリアとの比較で見ますと、優劣付け難い歌唱力が韓国にもあることが分かります。伸びやかに歌う特徴や魂のこもった心の叫びと言うべき歌唱を聞くことができます。

例えば、韓国歌曲の代表曲として名高い「クリウン・クムガンサン(懐かしい・慕わしい金剛山)」※4をチョー・スミさんの歌で聴いても分かりますが、非常に美しい歌唱であり、また、先祖代々の人々が生き抜いてきた韓半島に対する誇りのようなものを歌い上げている心意気を感じます。まさに金剛山はそのような山なのでしょう。もう一つ、味わい深い歌、「チルガプサン」※5という歌をアルトサックスの金ミヨンさんの演奏で聴くと分かりますが、抒情とか心情といった流れをたっぷりと含んだ韓国音楽の曲調を窺うかがい知ることができます。抒情的な魂の叫びに自ら酔ったように歌う歌唱法は多くの韓国歌手に特徴的なところですが、その例として、朴ジョンシクさんの「チョンニョンパウイ(千年岩)」※6を聴くと、それがよく出ています。歌と自分の魂が完全合体を果たしていると言ったらよいでしょうか。不思議に、イタリアも韓国もサッカー熱で沸くお国柄であり、歌って踊るという意味では、イタリア発の、ユーロディスコの威力も抜群であり、韓国の人々がすぐに踊りだす陽気さもイタリアに酷似しています。半島はお互いに似る運命にあるのかもしれません。

半島は平和への鍵を握る

大陸への入り口であり、海洋への出口であるところ、それがまさしく半島です。大陸文明と海洋文明を共に受容し、独特の文明を築き上げるところ、それが半島です。イタリア半島と韓半島、人類が築き上げる文明の大きな鍵が半島には隠されている。そういってもよいでしょう。そのことを音楽から解明することができるかもしれません。

21世紀に入って、はや、2014年を迎えましたが、平和への願望はますます強くなるばかりです。それもこれも現実があまりにも争いに明け暮れているからです。音楽を通して、世界が一つになる時代、平和を築く時代が来ているような気がします。

文中で紹介されている曲は以下のサイトから聴くことができます。
 (クリックすると、別ウインドウまたはタブで外部サイトが開きます。)

  1. ルチアーノ・パヴァロッティ 「オー・ソレ・ミオ」
    Luciano Pavarotti - 'O sole mio
     http://www.youtube.com/watch?v=d_mLFHLSULw
  2. ジュゼッペ・ステファノ 「帰れソレントへ」
    Giuseppe Di Stefano - Torna a Surriento
     http://www.youtube.com/watch?v=fCFKzpKIt7A
  3. ジュゼッペ・ステファノ 「カタリカタリ」
    Giuseppe di Stefano - Core 'ngrato
     http://www.youtube.com/watch?v=WckRfWe40J0
  4. チョー・スミ 「クリウン クムガンサン」
    チョー・スミ 「クリウン クムガンサン」
     http://www.youtube.com/watch?v=Kdsxa__8-3M
  5. 金ミヨン 「チルガプサン」
    チルガプサン(アルトサックス)− 金ミヨン(2012)
     http://www.youtube.com/watch?v=s9M4W7ylbIA
  6. 朴ジョンシク 「チョンニョンパウイ」
    チョンニョンパウイ
     http://www.youtube.com/watch?v=gKlj1WYPZHg