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ハングルはこんなに面白い! 〔1〕

筑波大学名誉教授 高橋 磐郎

最高の言語文字の可能性

はじめに

筆者は韓国語を習い始めてからわずか2年ほどの身の上ですが、ハングルのすぐれた構造にすっかり魅せられ感激してしまったのです。始めたときからすぐそれは気付いたのですが、勉強をして行けば行くほど、その感激はますます深まっていくばかりで、今もそれは続いています。

一般に言語は音声や文章で表現伝達されますが、その文章は語(あるいは単語)で、さらには語は字(あるいは文字)の集まりで出来ています。たとえば英語の字は、いわゆるアルファベットで26個あります。その列である単語は殆ど際限なくあります。

単語は発音と意味を持っていますが、字はA(エイ)、B(ビイ)…など名前はありますが、意味はもちません。英語の場合単語の発音はその要素である字の名前通りでなくかなり違ったものになります。たとえばhighのiは名前通りですがg、hは全く無音、hは名前の”エイチ”とは全く違った発音になります。

日本語の場合、字は仮名と漢字があり、仮名はいわゆる50音と呼ばれ、漢字は際限なくあります。仮名文字は語の中にあっても、発音は名前のままです。漢字は字でありながら一つ一つ意味を持っていて、いわば一つの字が語としての働きをしているので、表意文字と呼ばれているわけです。漢字の発音の方は、日本の場合、音読みと訓読みがありまたそれらの読み方が何通りもあって複雑です。

さてハングルの字はやはり際限なくあると言えます。しかしハングルは、字それ自身が、24個の簡単な”記号の組み合わせ”で出来ているのです。この意味でアルファベットや仮名とは決定的に違うものです。

またハングル文字もアルファベットや仮名のように表音文字だという人がいますが、それも違うと思います。ハングルの中には1文字で漢字1文字を表すもの、つまり意味を持っているものがあるのです。むろん仮名のように意味を持たないものもあり、表意、表音の両方だと言えるのです。

漢字も”へん”とか”つくり”とかいう記号の組み合わせで出来ていると言えますが、その要素記号は非常に沢山あるばかりでなく、その組み合わせの方法も複雑多様で、容易に把握できません。しかしハングルの場合は、要素記号は簡単で24個と決まっていますし、その組み合わせかたも極めて簡単、ひと目で解るものです。ハングルの良さは、この簡潔、明瞭な”組み合わせ構造”にあると言っても過言ではありません。

ハングルは韓国語を表している文字です。昔は韓国でも漢字を韓国語で表していたのです。その文字構造がこんなにすぐれているのなら、日本語だって英語だってハングル文字で表してみてはどうかと考えたのがこの連載を書こうと思った動機なのです。さらにエスカレートして、世界のすべての言語をハングル文字にすることが出来るとの夢に発展しました。

世界平和に向かうその手始めとして文字の統一なら決して夢ではないと考えます。

この連載はで上記のようなハングルの構造を全くハングルを知らない方々にも解るように説明しそのすぐれた特性を述べます。次に日本語をハングルで書くための方法を、かなり具体的に書きます。ハングル文字がかなり出てきますがその都度詳しく説明します。

さらに、英語のハングル化問題にも挑戦していきます。実は英語のハングル化の方が日本語のそれよりはるかに簡単だと思います。

ハングルは韓国語そのものでなく、韓国語を表す文字なのですが、やはり韓国語を多少は知らないと、本当の良さが解りません。ところが韓国語には動詞・形容詞などの変化が一杯出てきて、初心者の場合は辞書を引いても出てこない語があって悩むことがしょっちゅうです。筆者自身もそうでした。そこでどこをおさえれば、いろいろ複雑な変化が解るかを説明しようと思っています。

文法書などを見ると、複雑な変化の膨大な表などがあって、見ただけでうんざりするものです。しかし本質的な基本原則さえ解れば、変化は場合に応じて導き出すことが出来ます。変化を覚えるのでなく、原理から導き出すという立場に立ちます。数学には超数学(meta-mathematics)という分野がありますが、文法を導き出す超文法の方法を採るのです。そうすれば、わずか数頁で文法書一冊分の情報が得られます。

以上この連載は、正に独断と偏見に溢れているかもしれません。読者の叱咤御批判を歓迎致します。