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世界の音楽と家庭 [18]

音楽評論家 吉川 鶴生

ビートルズとプレスリー

英国のビートルズと米国のプレスリー

ビートルズは1960年代に活躍したイギリスの4人組で213曲ある曲数のほとんどをヒット曲にしたスーパースターです。解散してからも、ポール・マッカートニー、ジョン・レノンなど、それぞれに活躍を続けました。一方、ソロ歌手のプレスリーは50年代後半から70年代にかけてアメリカは勿論、世界の音楽ファンを熱狂させたスーパースターであり、ロックンロール、バラード、カントリー、映画音楽、ゴスペル、あらゆるジャンルを呑み込んで、ポピュラー音楽の王者として君臨したシンガーです。

ビートルズの音楽で際立つのは、やはり、愛を謳うというポップスの基本に立っているということです。「愛こそはすべて」※1と歌われると、最早、誰も抵抗できません。「長く曲がりくねった道は、君のもとに向かう道」と歌う「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」※2もまた、深く愛を歌い上げています。「レット・イット・ビー(そのままにしておきなさい)」※3という意味深長な言葉をマリア様のお告げとして歌った曲を以て、まもなくバンドを解散したビートルズでありましたが、疾風怒濤のごとく、60年代を駆け抜けたイギリスの4人組は、1965年、バッキンガム宮殿でエリザベス女王に拝謁して女王から勲章を授与されました。その意味するところは、ビートルズは英国の宝であることを女王が正式に認定されたということに他なりません。

プレスリーはアメリカそのものである

プレスリーは非常に熱心なクリスチャンでした。愛国心も強く、2年間、陸軍の軍歴もあり、アメリカを心から愛した人物です。ビートルズがお互いを気遣いながら、4人のチームプレーで成功を勝ち取ったのと対照的に、プレスリーは1人で強烈なカリスマ性を発散させながらラスベガスのステージを独壇場にしたスター中のスターです。ポール・マッカートニーやジョン・レノンがどこか女性的な雰囲気を漂わせているのとは違って、プレスリーは男性的な香りが立ち込め、充満していると言えます。1960年前後の「監獄ロック」などの激しいロックンロールをヒットさせた頃から、次第に、バラードの世界へ入り、「ラヴ・ミー・テンダー」※4「好きにならずにいられない」など、ムードたっぷりのラブ・ソングが全米の女性たちの心を酔わせます。

また、トム・ジョーンズのカントリー・ソング「思い出のグリーン・グラス」※5をカバーして、プレスリーが見事に歌い上げていますが、「汽車から降りたら小さな駅で迎えてくれるママとパパ」と歌うプレスリーの脳裏には故郷のテネシー州メンフィスへの激しい郷土愛があったはずです。郷土を愛すること=アメリカを愛すること、このような情感を抱いていたのではないでしょうか。そして、アメリカ人であることの証明、すなわち、プロテスタントの熱心な信仰を持っているという証しが、プレスリーのゴスペルです。彼はよく公共のコンサート会場でもゴスペルソングを歌いました。彼独特の節回しによって情感豊かに歌唱するゴスペルは、たとえば、「アメイジング・グレイス」※6を聴いても分かるとおり、非常に聴かせてくれるものです。プレスリーはアメリカそのものであったといっても過言ではありません。

大衆音楽は愛と平和を希求する

20世紀の戦後時代を風靡したビートルズとプレスリー。彼らの音楽を虚心坦懐に聴き込んで行くと、やはり、愛が不動のテーマとしてあり、平和を希求する純粋なキリスト教徒の魂が躍動していることが分かります。英米共にプロテスタント色の強いキリスト教国家ですが、この両国は何かにつけ、共同体勢を取る強い同盟関係を築いています。ビートルズが歌った「愛こそすべて」というメッセージが人類の目標にあるとすれば、21世紀にその精神を実現し、世界平和を構築しなければなりません。「アメイジング・グレイス(驚くべき恩寵)」というプレスリーのアピールが、神のもとに従順で謙虚な姿勢を持った人間本来の姿を要求しているとすれば、わたしたちはそのように生きることができるように務めなければならないと言えるのではないでしょうか。シリアやクリミアで今も人類は無用の争いを続けていますが、争いに勝者も敗者もなく、恨まれ、恨む関係は共に悲劇でしかありません。人類が本当に愛を実践するならば、聖書にある「神の国と神の義」を求める生き方になる筈でしょう。

文中で紹介されている曲は以下のサイトから聴くことができます。
 (クリックすると、別ウインドウまたはタブで外部サイトが開きます。)

  1. ビートルズ 「愛こそはすべて」
    The Beatles - All You Need Is Love-HQ − http://www.youtube.com/watch?v=s-pFAFsTFTI
  2. ビートルズ 「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」
    The Beatles - The Long And Winding Road [w/ lyrics]
     http://www.youtube.com/watch?v=Xqu9qhBHWNs
  3. ビートルズ 「レット・イット・ビー」
    The Beatles - Let It Be official video − http://www.youtube.com/watch?v=vXYX-drQWQk
  4. エルヴィス・プレスリー 「ラヴ・ミー・テンダー」
    Elvis Presley Love Me Tender − http://www.youtube.com/watch?v=aoriFtRVGQs
  5. エルヴィス・プレスリー 「思い出のグリーン・グラス」
    Elvis Presley - Green Green Grass Of Home (best video)
     http://www.youtube.com/watch?v=uvGvmsLQaHA
  6. エルヴィス・プレスリー 「アメイジング・グレイス」
    Elvis Presley - Amazing Grace Elvis Presley - Amazing Grace
     http://www.youtube.com/watch?v=B3XdXEJEI4E