機関誌画像

福祉のこころ(19)

喜多 善夫

新米の、おじさん介護士奮闘中

50歳を過ぎた昨年春、ヘルパー2級の資格を取って介護の仕事に就くようになりました。転職しようとしても職種は限られ、トラックの運転も考えましたが、妻からは危険リスクの高さを理由に止められ、半ば消去法で介護の仕事に就いたという具合です。とはいえ、介護福祉の仕事を始めようと決心した最大の理由は、妻の父の存在でした

転職を考え始めたころ、義父は歩行が不安定でデイサービスに通っていましたが、介護が必要なほどでもなく、家で普通に生活していました。お世話になった義父に、もし介護が必要となった時には自分が身の回りの世話をしたいと思っていたのです。しかし、恩返しする間もなく昨年秋に逝ってしまったのですが、背中を押して、今の仕事に就かせてくれたのは義父であったと感謝しています。

私が勤めているのは特別養護老人ホーム。いわゆる「終の棲家」です。この施設の利用者様には、認知症の人、半身麻痺の人、自分で食べることも排泄することもできず、管をつけている人。それらを全て併せ持っている人等がおられます。私たち職員はその方々の身の回りの世話をするのが仕事です。健康な人なら普通にできる日常の動作。例えば、食事、排泄、入浴のほか、着替え、ベッドから車いすへの移乗、洗面、食事後の歯磨き、服薬介助などのお世話です。また、食事中には喉を詰まらせないか、車いすからずり落ちそうになっていないか、歩ける人は転倒しないかなど、注意を払っていなければなりません。

私も最近になってようやく周りが見えるようになってきましたが、最初の1か月半は、仕事を覚えるのに汗だくになっていました。先輩に付いて、見様見真似でやるのですが、ダメ出しの連続でした。特に、オムツ交換ではOKをもらったのは、研修終盤の2回だけというありさまでした。「便を見て『やっていけない』と辞めてしまう人が結構いる」と聞きますが、そこをクリアできたのも義父のおかげだと思っています。

ところが、実は、ここまでは基本で、このほかに入居者一人一人が自分らしい生活を送れる環境を整えていくのが最大の仕事なのです。具体的には、その方の生活のリズムや嗜好(しこう)に合わせたケアをするということで、”一斉に食事”や”一斉にお風呂”はありません。

ケアは、形ばかりでなく、心からのケアをするのが職員の心構えであることは言うまでもありません。晩年を、どう有意義に過ごしていただくかを考えながらも、毎日同じような生活を繰り返していることにジレンマを感じることもあります。

自分の意思を伝えられない利用者様の願いを、どう汲み取ってケアしようかと思いながら、雑務に追われて何もできていない自分に嫌気がさすこともしばしばです。それでも、入居者様と年齢が近いという私の特長(?)を生かして、昭和の歌を歌ってみたり、昔の話題で盛り上がってみたりと、徐々にそういうことができるようになってはきました。体力的には厳しいですが、精神面で、より力を発揮できるよう努めています。

この稿に書ききれないことはたくさんありますが、他の介護士さんも、おそらく抱いているであろう「あなたに介護されてよかった」と思って頂ける介護士を目指して、日々奮闘中です。