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ハングルはこんなに面白い! 〔4〕

筑波大学名誉教授 高橋 磐郎

最高の言語文字の可能性  〔4〕

一編 ハングルのすばらしい特性

(4)コンピュータ化時代の寵児ハングル

ハングルの組み合わせ構造の利点は、コンピュータ化時代の現代に遺憾なく発揮されます。パソコンや携帯の入力などで、ハングルは日本のかな文字やローマ字入力に比べてはるかに簡単です。このような利用者側の利点もさることながら、ソフト設計などにかかる労力コストは、日本語とは比較にならないほど簡単化される筈です。

40年ほど前でしたか、はじめて新聞の製作にコンピュータを導入したのは日経新聞でした。新聞の植字というのは、原稿の1文字1文字に対応する版木を探し出して並べて行くものですが、多くの熟練した植字工たちの大変な努力を必要としたのです。それでも時々ひっくり返った字が新聞面にあったものです。

こうした作業をコンピュータ化しようというのです。原稿からコンピュータへの入力は人手に頼らざるを得ないのですが、最初は邦文タイプ方式でやろうという案があったようです。それには熟練した邦文タイピストを大勢必要として、大変なコストがかかります。今の日本では邦文タイプの存在すら知らない人も多いかもしれないのですが、英文タイプと比較してみれば、いかに漢字というものが情報処理上取り扱いにくいかがわかります。

それを現在われわれがやっている表音入力方式(漢字の読み方を仮名あるいはローマ字に変換して入力する)に切り替えることによって、どうにか切り抜けたわけです。それでも同音異義が多くあると、目的の漢字を探すのにずい分時間がかかります。しかもこれは日本語にある程度精通していないと出来ないことなのです。少なくともまず原稿の字が読めなければ話にならないからです。

それに対してハングルでは、上記のような面倒な変換操作は一切不要です。5月号で述べたハングルの構造からわかるように、子音・母音合わせて24のキーさえあれば、それを2つか3つ(多くて4つ、ほんとにまれに5つ)打つだけでハングル1文字が入力ができます。しかも、極端な場合、韓国語を全く知らなくても、原稿のハングル文字を見て、形式的にキーを押せば入力出来るのです。

さらに進めば一切人手を使わずに、手書きの原稿を読み取って入力することが出来るソフトを作ることが可能になる筈です。日本語でそれをやるとすれば膨大なソフトが必要でしょうが、ハングルならごく簡単になるでしょう。韓国で日本よりはるかに急速にIT化が進んだのも、このハングルの組み合わせ構造が強い影響を与えたからだと言えます。

日経新聞の話に戻りますが、それ以前に、アメリカではすでに新聞作成のコンピュータ化が出来ていたそうですが、日経でかかった費用と労力はアメリカとは比較にならないほど大きかったとのことです。

この節の最後にハングルの携帯電話の入力ボタンの例を示しておきます。数字や*#などの補助記号もいれて12個のボタンに収まっていて、図(イ)のような簡単な操作でハングル文字を入力出来ます。さらに言えば、実は10個の母音記号はㅣ ㅡ ㆍの三つの記号だけで出来ているといえます。ㅏは ᅵᆞ、ㅛはᆞᆞᅳなどと考えればよいわけで、実際に図(ロ)のような携帯の入力ボタンもあります。

図イ
〔図イ〕
図ロ
〔図ロ〕